道後温泉、観光客の満足度向上へDX推進 人流データ分析で事業者の生産性向上も
サイトでは訪日客の獲得に向けて多言語対応も強化する。国内全体の訪日客は2023年に約2500万人とコロナ禍前の8割まで回復。宿泊費や買い物代といった消費額は円安効果もあり、5兆円を初めて突破した。 道後温泉はコロナ禍前の宿泊者に占める訪日客の割合が数%だった。サイトの閲覧状況などを通じて訪日客のニーズを踏まえた誘客促進を図り、宿泊業で課題となる時期や曜日による繁閑の差を埋めたい考えだ。 観光業のDXは観光庁も促しており、2023年春に報告書をまとめた。旅行者の利便性向上や事業者の収益力強化だけでなく、観光は小売りや金融、農業といった他産業との接点が多いとして、地域経済の活性化にもつながると指摘した。 道後温泉のDXをけん引する佐渡さんは、自身が社長を務める道後プリンスホテルでも実践し、成果を上げてきた。紙や電話のやりとりが多かった現場にITを持ち込み業務を効率化。2023年9月期は全国旅行支援の効果もあり、売上高、純利益ともに過去最高だった。
今年は「コロナ後のリベンジ消費が息切れし、反動が来るかもしれない。物価高の中で旅行を控える動きが出ないかどうかも注視したい」と気を引き締める。これまでファミリー層の誘客に注力してきたが、ホテル最上階の10階を改装し、松山城が一望できる露天風呂付きの客室を夏に設ける。高価格帯の部屋で新たな客層を取り込む。 佐渡さんは「人手不足も課題」と説明。80人超いた従業員はコロナ禍で相次ぎ退職し60人ほどに減った。調理場や配膳の担当者が足りず、夕食付きのプランの提供を抑えざるを得ない状況が続く。予約の少ない平日は光熱費などの固定費が負担になるため、2023年は約60日を休館日にした。人材確保の特効薬はなく、従業員が休みを取りやすい環境の整備が持続的な宿泊業に欠かせないと強調する。