グーグルの「クチコミ」削除が難しい深刻な事情、主観的な感想だからこそ、高いハードルがある
しかし、試したことがある方なら分かると思うが、ウェブフォームからの請求をしてもほぼ拒否されてしまう。Googleが削除するのは、事実上、裁判で削除が命じられた場合に限られる。 ■裁判所に「削除」を認めてもらう条件 クチコミで問題となるのは典型的には名誉毀損だが、裁判所に削除を認めてもらうための条件は厳しい。 ・クチコミによって書かれた側の社会的評価の低下があること ・投稿内容に公共性、公益目的、真実性のいずれかが「ない」こと
・意見論評としての域を逸脱していること(*意見論評によるものの場合) 上記の点を、削除を請求する側に立証することが求められる。 そして、裁判所が削除を認める判断をする際に最も重視するのは、指摘されている内容に真実性がないこと、つまり「虚偽」といえるかどうかだ。しかし、クチコミという性質上、それが「虚偽」であることを立証することは、非常に難しい。クチコミの内容が客観的な「事実」にひもづく情報ではなく、主に主観的な「感想」や「論評」で成り立っていることが多いためだ。
「事実」に関する記載がなければ、第三者がそれを否定するための材料がそもそもないことになる。これが、削除のハードルを上げているのである。 客観的に見て素晴らしいサービス提供がされていたとしても、サービスを受けた人が主観的に満足しなかったという事情があれば、「満足できなかった」というクチコミを投稿することは十分あり得る。しかし、そのようなクチコミを投稿すること自体は、否定することはできない。 なぜなら、クチコミで訪れた店舗や病院の感想を書くことも立派な「表現」だからだ。表現の自由は、民主主義の前提と位置づけられる人権の中でも、最も重要とされる人権の一つである。自由な情報発信ができるということは、内容がどのようなものであれ、それ自体に民主主義の前提を支える価値があると考えられている。匿名アカウントの主観的な感想や論評であっても、原則としてその価値は変わらない。