ミセス 大森元貴、ONE OK ROCK Taka、GLAY TAKURO、THE YELLOW MONKEY 吉井和哉……楽曲提供で見せるそれぞれの作家性
作曲にB'zの松本孝弘(Gt)、作詞にGLAYのTAKURO(Gt)を迎えた美川憲一の60周年記念シングル『これで良しとする』が9月25日に発売されることが発表となり、B'zとGLAYという、90年代以降の日本の音楽シーンを語るに欠かせないロックアーティストのメインコンポーザーによる豪華なコラボレーションが話題をさらった。 【画像】まるで夢の世界!幻想的な空間で歌うMrs. GREEN APPLE 大森元貴 本稿では、このようにロックバンド/ユニットのメインコンポーザーが、他ジャンルのアーティストに提供した楽曲をピックアップし、彼らのコンポーザーとしての魅力を掘り下げてみたい。 ■TAKURO(GLAY) まずは先述したGLAYのTAKUROについて触れたい。彼は長い音楽活動の中で、多くのアーティストに楽曲を提供してきた。その数はこれまで約50アーティストに及び、ロック、ポップス、アイドル、演歌歌手とジャンルも多岐にわたる。The Beatles、特にジョン・レノンに影響を受けたと公言しているTAKUROが作る楽曲は、歌を活かした譜割りとエバーグリーンなメロディが特徴だと思うが、そのメロディの普遍性が提供楽曲にもよく表れている。 幾多の提供曲の中でもピックアップしたいのは、武井咲に提供した「恋スルキモチ」(2011年)。どこか牧歌的な趣きもあるピュアなメロディのミディアムバラードだ。俳優、モデルとして活躍している彼女は、声域も、ボーカルアプローチの幅も決して広くはないだろう。そのため一音一音を丁寧に、メロディのピュアさを最大限に活かす歌い方をしている。楽曲のほとんどを地声で歌うスタイルで、少したどたどしいところも、初々しい印象につながっている。TAKUROは、シンプルな譜割りと、覚えやすいメロディを繰り返す構成の中、落ちサビで高音のファルセットを加えることで、ドラマティックな1曲に仕上げた。TAKUROが、歌い手 武井咲の力量、そして彼女の歌声の個性に合わせて楽曲を制作したことが窺える。 ■Taka(ONE OK ROCK) 続いてはONE OK ROCKのTaka(Vo)を取り上げたい。ワールドワイドに活躍するONE OK ROCKは、日本屈指の動員力を誇るバンドだ。海外のファンも多い。米国のプロデューサー ジョン・フェルドマンなど、海外アーティストとの共作も多い中、特に楽曲を手掛けることが多いのがTaka(Vo)とToru(Gt)である。作詞に至ってはTakaが圧倒的に多い。ここではTakaの楽曲提供曲にスポットを当てていきたいと思う。ゲストボーカリストとして、幾多の海外の有名バンドや、ヒップホップアーティスト、R&Bシンガーなど多くのアーティストと共演しているTaka。彼が楽曲提供、プロデュースを手掛けたのが、TVアニメ『「鬼滅の刃」遊郭編』(フジテレビ系)OPテーマ「残響散歌」(2022年)のヒットで同年『第73回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に初出演を果たしたAimerである。 彼女の4枚目のアルバム『daydream』(2016年)は、Takaを筆頭に、凛として時雨のTK、RADWIMPSの野田洋次郎、andropの内澤崇仁、スキマスイッチなどが楽曲提供とプロデュースを手掛け、それまでのAimerのサウンドとは一線を画す、ロック色の濃い作品とも言えるかもしれない。本作の中で、Takaが提供した楽曲は、「insane dream」「closer」「Falling Alone」「Higher Ground」「Stars in the rain」の5曲。この5曲の作曲に加え、うち3曲の作詞も手掛けている。メロディや構成のパターンは豊富だが、どれもTaka本人が歌っている姿が想像できる。つまりTakaらしい、歌の高低差が大きい楽曲ばかりだ。「insane dream」ではTaka本人がコーラスも担当。ほとんど音数がないパートと、ラウドなバンドアンサンブルのダイナミズムのメリハリで聴かせるこのミディアムアップチューンでAimerは、中低音~低音を少し野太く響かせたり、細かいビブラートをつけて聴き手に迫ってくるような臨場感を出すなど、新しいスキルを開花させている。Takaは、あえて“自分らしい楽曲”を提供することで、Aimerの新たな魅力を引き出すことに成功したと言えるのではないだろうか。そしてこの低音、ビブラートのスキルは、大ヒット曲「残響散歌」でも活かされている。