BMW「M1」が約8500万円で落札! いまやフェラーリ「512BB」と「308GTB」を足した値段より高くなった理由とは
約8500万円で落札されるも、想定内?
このほどRMサザビーズ「PARIS 2024」オークションに出品されたBMW M1は、資料によると276台目の市販ロードゴーイングバージョンとして、「ブラウ(Blau:濃紺)」のボディカラーに「シュヴァルツ(Schwarz:黒)」のレザーインテリアを合わせた魅力的なコンビネーションで、1980年10月2日に完成したと伝えられる。 そしてディールスドルフの「BMWスイスAG」社を介してスイス国内に新車として納入されたものの、ファーストオーナーによって登録されたのは、1983年になってからのことだったという。 そののち、2006年5月にドイツの著名なコレクターに売却されるまで、初代オーナーが所有。さらに4年後となる2010年11月18日に、今回のオークション出品者でもある現オーナーのもとに譲渡され、過去14年間にわたって管理下に置かれている。つまり、歴代オーナーは3人に過ぎないということになる。 現在でもなお、オリジナルペイントが良い状態で残されているこのM1は、スタンダードよりもドライビングポジションを低くすることのできる、非純正のシートセットに換装されているそうだが、本来のシートは販売時に添付されるとのことである。 またファクトリーレコードによると、この個体はオリジナルナンバーの3.5L直列6気筒DOHCエンジンを搭載しており、オークション公式WEBカタログ作成時のオドメーターが刻む総走行距離はわずか2万1142kmに過ぎないとのことであった。 RMサザビーズ社の調査によると、1978年から1981年の間に生産されたM1はわずか455台で、BMWエンスージアストの間では、常に渇望されるアイコン的な1台といえる。そんな希少モデルゆえに、2010年代中盤の最盛期には、100万ドル(当時のレートでは約1億円)越えも散見され、現在にあっても高級クラシックカーディーラーなどでは6000~8000万円あたりの正札が付けられるのが通例となっている。 そのような相場観を踏まえてだろうか、RMサザビーズ欧州本社は現オーナーとの協議のうえで、48万ユーロ~55万ユーロというエスティメート(推定落札価格)を設定。1月31日にパリ・ルーヴル宮の「サル・デュ・カルーゼル」を会場として行われた競売では52万2500ユーロ、日本円に換算すれば約8500万円で落札されることになった。 ちなみに新車時代のBMW M1は、フェラーリでいえば308GTBよりも高価で、512BBよりは安価だったそうだが、現在のクラシックカーマーケットにおける相場は、その両方を足した以上のプライスとなってしまう。 それは希少性、あるいは生来の伝説性というものが、マーケットにおける価値に大きな影響を及ぼすという、ひとつの実例なのだろう。
武田公実