【中国】車販売目標達成が3割止まり 24年実績、過度に高い設定響く
主な中国自動車メーカーの2024年の新車販売実績がほぼ出そろい、販売目標を達成したのは全体の3割にとどまった。新車市場の成長が鈍る中、各社が販売を伸ばしにくい状態にあることを反映した。ただ24年は過去最多の販売台数を更新したメーカーが多く、過度に高い目標を設定したこともあだとなった形だ。 上場企業を中心に主要15社の24年の販売実績を調べた。いずれも乗用車の販売を主体とするメーカー。ただナタ汽車(ナ=口へんに那、タ=口へんに託のつくり)は9日までに販売統計を発表していない。 24年の販売目標を達成したのは5社。中でも昨年存在感を一層高めたのが「新エネルギー車(NEV)」最大手の比亜迪(BYD)だ。 BYDの24年の新車販売台数は前年比41.3%増の427万2,145台。通年目標360万台に対する達成率は118.7%だった。年後半には通年目標を400万台に引き上げたと報じられ、400万台とした場合も目標を7%近く上回ったことになる。 BYDは年間販売の過去最多を更新し、グループ企業を含めた国内メーカー別販売台数で初めて首位に立った。長く中国自動車最大手の座にあった上海汽車集団(上汽集団)を抜いた。23年は上汽集団と約200万台の差があったが、1年間で一気に逆転したことになる。 BYDは豊富なラインアップを武器に、拡販に成功した。中国で需要が伸びるプラグインハイブリッド車(PHV)の売り込みを強めた結果、PHVの販売は7割以上増加した。積極的な海外市場の開拓も押し上げ要因。 年末にかけて販売を伸ばし、12月には51万台を突破して単月の販売最多記録を更新した。50万台超えは3カ月連続。値下げ販促に加え、政府の自動車買い替え補助政策という追い風に乗った形だ。 吉利汽車控股も好調な実績を残した。24年の新車販売は32%増の217万6,567台で、通年の過去最多を更新。目標としていた200万台を9%近く上回った。NEV販売は92%増の88万8,235台と過去最多で、PHVは2.0倍と急伸。輸出も5割以上伸びた。 新興勢ではNEVメーカーの理想汽車(Liオート)が頭一つ抜け出し、24年の新車販売は33.1%増の50万508台となった。通年目標の48万台を超え、高級ブランドの新車販売台数では最速で年50万台を達成した。同社はPHVに分類されるレンジエクステンダー式電気自動車(REV)が主力で、市場の流れをつかんだほか、車両のスマート化がうまくいっていることも人気の要因とされる。 浙江零ホウ科技(ホウ=足へんに包、零ホウ汽車)も目標値を達成。24年販売は2.0倍の29万3,724台だった。目標は25万~30万台。消費者の節約志向が広がる中、零ホウ汽車の「高性能なのに手の届きやすい価格帯」が受け入れられたようだ。 スマートフォンをはじめとする電気製品の世界大手、小米科技(シャオミ)は、同社初の電気自動車(EV)セダン「SU7」の24年の販売台数(引き渡しベース)が13万5,000台を超えた。目標としていた13万台を上回った。 ■“勝ち負け”が鮮明 一方、24年は“勝ち負け”が鮮明化した。特に国有大手の伸び悩みが深刻だった。 国有大手各社の24年販売は、上汽集団(20.1%減の401万3,023台)、広州汽車集団(広汽集団、20.0%減の200万3,058台)、東風汽車集団(9.2%減の189万5,934台)の3社が前年割れ。上汽集団は6年連続で前年実績を下回り、23年まで18年続いていた中国首位の座を譲った。重慶長安汽車は5.1%増の268万3,798台。 各社の目標達成率は長安汽車が約96%だったのに対し、残り3社は7割台。これまで国有大手の販売を下支えしてきた合弁メーカーの不振が足を引っ張った。各社ともNEV分野の強化に乗り出しているものの、競争が激しさを増す中で競合を上回るほどの成果を出せていないのが現状だ。 奇瑞控股集団の達成率は約65%。ナタ汽車を除く14社の中で最も低かった。ただ、24年販売は38.4%増の260万3,916台で、過去最多を更新した。輸出台数も過去最多の114万4,588台となり、中国ブランドの乗用車輸出台数では22年連続で首位を維持した。目標値を前年から2倍以上とする過度に高い設定が足かせとなった。 ■今年も目立つ高い設定 今年も高い目標が目立つ。 吉利は25年の新車販売目標を271万台に設定した。24年実績から約25%増となる計算。零ホウ汽車は7割増の50万台、長安汽車は約1割増の300万台をそれぞれ目指す。EVメーカーの上海蔚来汽車(NIO)は前年の2倍となる約44万台と定めた。 広汽集団は「前年実績比15%増」に設定。230万台余りを売り上げる必要がある。奇瑞は「業界全体の成長率を10~20ポイント上回る」との目標を掲げた。 ただ市場の伸びは今年も限られるとみられ、各社は高い目標値を実現するためにも、値下げを含む販促を強めると考えられる。中国自動車業界団体、全国乗用車市場信息聯席会(CPCA)の秘書長で、自動車アナリストの崔東樹氏は、25年の中国の国内乗用車販売台数(小売りベース)が前年比2%増の2,340万台になるとの見通しを示している。