座高測定、ぎょう虫検査 ── おなじみの項目なぜ学校健診から消えた?
新入生を迎え、小中学校や高校では学校健診の季節を迎えていますが、気がつくと、定番だった「座高測定」や「ぎょう虫検査」などが健康診断のメニューから姿を消しているようです。一体、何故なのでしょうか。
座高測定・寄生虫卵検査が必須化したのは約60年前
座高測定と、ぎゅう虫検査および検便による寄生虫卵検査は、学校の健康診断の内容などを定めた学校保健安全法施行規則が2014年4月の改正により、健診における「必須項目」から外れました。 文科省によると、座高測定と寄生虫卵検査は1958(昭和33)年、当時の学校保健法(現在の学校保健安全法)の制定にともない、必須項目となりました。
座高測定は戦前から。そもそも目的は……
では、このうち、座高測定はどういった目的で導入されてきたのでしょうか。実は歴史は古く、戦前より内臓の発育を見るために行われてきたそうです。 しかし、2013年に文科省が設置した「健康診断のあり方検討会」で議論の結果、「座高は発育の評価に有用な側面もあるものの、現状ではほとんど活用されていない」、「子どもの成長を評価する上では身長や体重の方がより重要」との指摘がありました。学校現場からも不要との声も多く、必須項目からの削除が決まったそうです。
寄生虫は検出率が激減 55年前の約22%から近年は0.1%に
同検討会では、寄生虫卵検査についても話し合われた結果、「衛生状態の良い現代に、学校で寄生虫卵の検査をする意義はかなり乏しい」、「寄生虫の検出率は極めて低く、ここ10年間、1%以下で推移している」などの指摘がありました。 文科省による2014年度の学校保健統計調査では、寄生虫卵を保有する小学生が0.13%で、55年前の祖父母世代(1959年度同調査)の21.80%、30年前の父母世代(1984年度同調査)の3.36%に対し、大幅に減少したとの結果が出ています(グラフ)。学校現場からも不要ではないかとの声もあり、削除が決まりました。
代わりに追加になった項目も
両検査は必須項目から外れただけで、各校で独自に実施しても差し支えありません。ただ、文科省では「必須項目の検査だけで結構時間がかかるので、実際に独自で検査している学校は少ないのではないか」と予想します。香川県の公立小学校で働く40代女性教師も「学校現場は仕事量が多い。ぎょう虫検査なら、子どもたちから集め、チェックして薬局へ持っていくなどの作業が必要だったが、その分の作業が減ったのでありがたい」と話します。 必須項目から、座高測定や寄生虫卵検査が削除された一方で、四肢(手足)の運動機能の検査が追加されています。部活動などでの過剰な運動による手足のけがや、逆に運動不足に伴うけがなど、手足の運動機能に関する問題が増えているためだそうです。 文科省では、「それぞれの時代にあわせて、子どもたちが学校生活を送る上で支障がないかどうか検査するのが学校の健康診断の役割」として、子どもたちの健康維持および促進のために、今後も検診を活用してほしいとしています。 (取材・文:具志堅浩二)