加藤ローサ、10年ぶり地上波主演『きみの継ぐ香りは』“明るく振る舞う”ことへの不安:インタビュー
女優の加藤ローサが、ドラマ『きみの継ぐ香りは』(TOKYO MXで毎週金曜21時25分から放送中)に出演。加藤ローサは星野真里とダブル主演で、星野演じる桜の初恋相手、萌音を演じる。加藤は地上波連続ドラマで主演を務めるのは10年以上ぶり。本作の原作は実写ドラマ化もされ話題となった『花嫁未満エスケープ』の小川まるに氏。主人公・桜の息子である透輝に初めてできた恋人・叶は、桜の初恋相手・萌音との思い出の香りを纏って現れる。叶は偶然にも萌音の娘で親子2世代にわたって紡がれる、初恋と家族愛をテーマにしたヒューマンドラマとなっている。インタビューでは、出演することに不安を感じていたという加藤ローサに、その理由と本作を通して感じた家族について話を聞いた。(取材・撮影=村上順一) 【写真】加藤ローサ撮り下ろしカット ■どんな顔をしてセリフを言ったらいいのかわからなかった ――本作への出演は不安もあったみたいですね。 本作のメインは桜のストーリーですが、私も大きく関わる役です。桜は大学生時代に萌音のことが好きで、萌音が結婚して十数年疎遠になって再会します。再会した萌音は桜の気持ちを知っていながら、「ママ友としてこれからもよろしく」と平然と言ったりします。相手の気持ちを知っていながらも気づかないふりをするのですが、私はどんな顔をしてそういったセリフを言ったらいいのかわからなくて。 ――そこからどうされたんですか。 まず監督に相談しました。萌音が原因で、桜が一人で子どもを産み育てる人生になって、それが分かってからも関係を続けていくということについて話しました。萌音のそういった言動はこの物語でちょこちょこ出てくるので、そこに対する準備はしていました。 ――どういう表情になりました? 監督からは「そんなに暗くなくていいよ」とおっしゃってくれて、桜が萌音のことを好いてくれているという事実、自分のせいでという気持ちもあるけど、努めて明るく振る舞う、そのことには気づかない、引きずっていない感じで演じることになりました。でも、私にそれができるか不安でした。 ――難しいですよね。その中で出演を決めた決め手は? 原作を読んだことが大きかったかもしれません。当時台本はまだ3話ぐらいまでしかできていなかったので、私の中でちょっとイメージが湧かなくて。萌音がどういう表情、テンションで言っているのか想像ができなかったのですが、原作には絵があるので読んで理解が深まりました。原作は12話あるのですが1、2時間で読んでしまうくらい没頭して読めました。 自分の役柄もそうですけど、桜の人生ってすごいじゃないですか。「萌音が結婚したショックで自暴自棄になってできた息子」が透輝だというのは、文字のみだとちょっとパンチがありすぎて、桜の姿も思い浮かばなかったのですが、原作を読んだことと、主演が星野さんだと聞いたことでパァッと霧が晴れたかのように映像が見えました。「私はこのお話は断るかもしれない」と思いながら原作を読んでいたのですが、原作の世界観と星野さんが桜を演じられると聞いて、桜のことも理解できるし、萌音のことも納得できて「やります!」とお返事させていただきました。 ――加藤さんが萌音と重なった部分はありますか。 重なるところはあまりないのですが、もしドラマみたいなことがあったら、私も気づいていないふりをしてその場をやり過ごすと思い、シンパシーを感じるところもありました。例えば仕事仲間が私に気があるのではないかと感じたとしたら、私は気づかないふりをすると思います。 ――桜を演じる星野真里さんの印象は? 良い意味で空気のような人だなと思いました。私は久々の現場で緊張しすぎて、私から話しかけようか、でも話しかけられるのが嫌な方もいらっしゃるし...とかプチパニックでした(笑)。私がそんな状況のとき、星野さんは部屋の隅の方に静かに座っていました。目につかないようにしてくれていたのか、それは定かではないのですが、話しかけてこないの? 「私ここにいるけど」という感じもなくて、すごく助かりました(笑)。なので、第一印象はいい空気感を作ってくださっていたという感じです。 ■自分の気持ちを優先してやったことに全く後悔はない ――今回家族というのも重要なテーマとしてあります。加藤さんにも家族がいますが、参考になることはありましたか。 いろいろな愛のカタチがあると思いました。桜の息子の透輝が、この現代にこんな子がいるのかと思うくらい、まっすぐでピュアな子なんです。自分でも「俺、ワンナイトラブでできた子どもなんだ」という衝撃的なセリフがあるんですけど、すごく堂々と話すのでビックリしました。普通だったら透輝が自分って何者なんだと自暴自棄になったり、桜に対して反発したり、恨んだりしてもおかしくないと思います。まっすぐ素直に堂々と生きている姿を見て、本当に素敵だなと。それは桜がこの愛に嘘はないと本当に大きな愛で透輝を包んでいたから、いい子に育ったんだと思いました。桜が一生懸命、透輝を愛しているんだということをしっかり伝えていたので、改めて言葉は大事だと思いました。私もより良い家族を築いていくために頑張りたいです。 ――ところで本作のテーマの一つに初恋がありますが、加藤さんの初恋の思い出は? 小学校4年生のときのバレンタインデーです。初めての経験だったのですが、直接渡すのが恥ずかしくて、手作りのクッキーその子の家のポストに入れました。『◯◯君へ』とは書いたのに、自分の名前を書くのを忘れてしまい、相手にはクッキーは届いているけど、『これ誰からだろう?』という状態で(笑)。おそらく両想いぽかったんですけど、自分から「昨日クッキー入れたの私です」とは言えなくて…。 ――切ない初恋でしたね。最後に、加藤さんは旦那さまの松井大輔さんと知り合って、約半年でスピード婚、その旦那さまを追いかけてフランスに行き出産とドラマのようなことをされていましたが、加藤さんのようにすぐさま行動に移せる秘訣はありますか。 私は自分の直感を大切にするタイプなんです。自分がしたいと思った時にするのが一番正解だと思っていて。周りから忠告などもあったのですが、自分はそのとき思った気持ちで行動する方が、後々悔いが残らないと思っています。結婚は大変なこともたくさんあると思いますが、結婚したいと思ったから結婚して、フランスに行かなければと素直に思ったから行ったんです。 ――なるほど。 自分で決めたことだから誰も責められないし、自分だって責められない。友達からは「ローサは本当に頑固だよね」、「人の話を全然聞かないよね」とか言われるんですけど、実はそうではなくて、話はちゃんと聞いているんです。友達からの助言にあるような可能性もあるということは100%分かっているけど、自分のいまの気持ちを抑えてまでそれに従おうとは思えなくて...。 ――自分の気持ちを大事にすることが重要なんですね。 周りの目を気にしたり、人の言うことよりも、自分がどう思ったのかを最優先した方が、私の場合は結果としてすごくいいんです。改めて振り返っても、自分の気持ちを優先したことに全く後悔はないですから。私はそれしかできないんですけど(笑)。それによって新たな出会いや経験ができたので、不思議と後悔はないんです。行動に移すまではいろいろ考えますが、考えすぎるのも良くないというのは最近気づきました(笑)。 (おわり) ヘアメイク:三宅茜 スタイリスト:浜木沙友里