映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は「ほぼ原作ファン向けに作った映画」なのに、なぜ全世界で400億円を売り上げるヒット作に? ブラムハウスCEO、ジェイソン・ブラムが明かす『FNAF』原作者スコット・カーソンとの絆
2024年2月9日の公開が迫った映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』。同名ゲームシリーズの第1作を映画化した本作は、すでにアメリカ本国で大ヒットを遂げ、全世界で400億円以上の売り上げを叩き出すなど日本公開前から大盛り上がりを見せています。 『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』画像・動画ギャラリー 今作を制作したのは、アメリカの『ブラムハウス・スタジオ』という映画制作会社。『M3GAN ミーガン』や『パージ:大統領令』、『パラノーマル・アクティビティ』などの作品に携わった映画スタジオで、タイトルだけでも知っているという電ファミ読者も数多くいるはず。 数多くのホラー映画を制作してきた同スタジオには日本国内にも多数のファンがいますが、原作であるゲーム『Five Nights at Freddy's』のファンも巻き込んだ本作の公開に期待が高まっています。 本記事では、1月29日に公開に先駆けて実施された、ブラムハウスCEO ジェイソン・ブラム氏への合同インタビューの様子をお届けします。 取材・文/Squ 編集/実存 ■『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は、ほとんど原作ファンのためだけに作られている ──ゲーム版『Five Nights at Freddy’s(以下、FNAF)』第1作の開発時、原作者であるスコット・コーソン氏は「何気に怖い」という部分から発想を広げていったそうなのですが、ブラムハウス・スタジオがホラー映画を中心に提供するようになったきっかけやテクニックなどあればお聞かせください。 ジェイソン・ブラム氏(以下、ブラム氏): 今までインディーズの低予算映画をたくさん作ってきた中で、配給時にそれほど多くの人に届けられないという問題があったんです。 何か大きなひらめきや発想というわけではないのですが、これらの低予算映画にホラーという要素を組み込むと、たとえそれが変で奇妙な映画だったとしても、より広い層に届けることができるのです。 ──ゲーム版『FNAF』は、シンプルなメカニクスで最大限の恐怖を引き出すという非常にインディーズらしい作品に仕上がっていると思うのですが、映画とゲームというメディアの違いこそあれどブラムハウス作品にも似ている部分があるように感じます。 そんな中で、ゲームと映画の共通点や違いについて、ブラムさん自身はどのようにお考えでしょうか? ブラム氏: 今回、我々のブラムハウスとしてのアプローチと、原作者であるスコットのアプローチに類似点があることは間違いないですね。ただ本作の制作方法は少し独特で、普通のハリウッド的な映画制作とは異なります。 ハリウッド映画における原作モノというのは本来、原作ファン向けだけでなく新規層に向けても制作するのです。一方で、今回の『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は、ほとんど原作ファンのためだけに作られています。ですから、本作をご覧になる方は最低限『FNAF』がどんなゲームであるかを知っている必要があるのです。 この選択をした結果、『FNAF』はブラムハウス作品の中で最も成功した作品になりました。もちろん万人ウケを狙うという線もあったでしょうが、それゆえに誰にも見向きされない可能性だってあります。なので今回の成功から、「誰を対象として、誰に向けて作品を作るのか」という部分にフォーカスすることも大切だと学びました。 ──本作にはゲーム版第一作だけでなく、シリーズ全体の要素が包括的に取り入れられているように感じます。 ファンがすぐに気づくことのできるものから難しいものまで、たくさんのイースターエッグの存在が印象的でしたが、本編に含め切れなかった要素などもあったりするのでしょうか? ブラム氏: 実のところ、我々は続編を作りたいと思っています。入れられなかった要素に関しては、今回は秘密ということにさせてください。もし次作があれば……ですけどね(笑)。 ──原作についての知識はあまりなかったのですが、本作に非常に共感し、感動しました。「ファンのための映画」として制作された本作が万人受けする可能性について、どのようにお考えでしょうか? ブラム氏: 少し不思議かもしれませんが、「万人ウケを狙わない姿勢」をとったことで、より良い結果になったのでは無いかなと考えています。原作ファンに注力することに特化していたにも関わらず、予想外にも原作ファン以外の方にも見てもらえる作品として成功したのです。 通常、ハリウッドで原作モノを作るときには、大金を原作者に払って得た「免罪符」を元に自由に創作します。でも我々は異なるアプローチで取り組んだのです。 原作者であるスコットが納得するシナリオが完成するまで10本近く脚本を執筆し、8年の歳月が流れました。我々はキャスティングやアニマトロニクス監修といった全てのプロセスに彼を巻き込んでいたので、結果的にそれが今回の成功に繋がったのかなと思います。 ──今までのご回答の節々から作品に対する理解やリスペクトが感じられたのですが、ジェイソンさん自身は普段ゲームをプレイされるのでしょうか? ブラム氏: あまりゲームをプレイすることはありませんね......。実は原作ゲームについてもあまり詳しくないんです。それでも本作を作りきることができたのは、スコットという、私以上にゲームに詳しくて、ファンと繋がっている人間がいたからです。 我々はあくまで、スコットの頭の中にある、彼が作り出したビジョンや世界観を映画に落とし込む立場にすぎません。 ここから先は他のインタビューでも話していないことになります。長いこと制作を続けてやっとスコットの中で納得がいく原稿が出来上がったのですが、それを出資者に見せた際、彼らから全く理解が得られなかったんです。 そこで私はスコットに対して「君の頭の中にあるもの、この脚本の紙の上にあるものを完璧に実現する唯一の方法は、君自身が出資することだ」と言ったんです。この提案は、私の30年近くのキャリアの中でも初めての経験でした。 最終的に彼は自分でお金を出したわけですが、いい作品が出来上がって本当によかったです。 ──最後に、急成長を続けるブラムハウス・スタジオにおいて、大切にしていることをお聞かせください。 ブラム氏: ブラムハウスでは、テレビシリーズやライブイベントなども手がけていますが、やはり一番大切なのは映画です。今後も興味深くて考えさせられたり、何かを感じさせるような映画を制作していきたいと考えています。(了) ・映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』作品情報 ゲームファンやブラムハウスファンからの期待が高まる、映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は2024年2月9日に全国公開予定となっています。新人警備員マイクとともに、5日間のピザレストラン勤務に挑戦してみてはいかがでしょうか。
電ファミニコゲーマー:Squ
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