【米大統領選2024】 トランプ前大統領が当選確実、4年ぶり政権奪還へ 激戦7州で全勝
米大統領選挙は5日投開票され、米東部時間6日午前5時半(日本時間午後7時半)過ぎ、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)の勝利が確実となった。BBCが提携する米CBSなど、主要現地メディアが相次ぎ報じた。勝敗を決めるとされた激戦7州については、同9日夜(日本時間10日午前)までに全7州でトランプ候補の勝利が確実とされた。選挙人が過半数の270人必要なところ、計312人獲得したトランプ候補は、4年ぶりに政権に復帰する。 日本時間10日正午過ぎの時点で、全国の得票率では、トランプ次期大統領が50.4%、ハリス副大統領が47.9%となっている。 トランプ候補は、激戦州ペンシルヴェニアでの勝利が確実となった6日午前2時半ごろ、支持者らを前に「勝利演説」をした。 過去に再選を逃した大統領経験者が復権するのは、米史上2人目。 一方、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領(60)は、この夜は演説せず、6日午後に演説で敗北を認めた。トランプ候補の当選が確実となったことで、女性およびアジア系として初の大統領誕生は実現しない見通しとなった。 BBCは米CBSの分析などを基に、開票結果予想を報じた。当選には各州に割り振られている選挙人(計538人)のうち270人以上の獲得が必要。 トランプ候補は6日午前5時半(日本時間午後7時半)過ぎ、激戦州の一つのウィスコンシン州とアラスカ州での勝利が確実になり、獲得した選挙人が279人に達して大統領選での当選が確定的となった。その後、別の激戦州のミシガン州でも勝利する見通しになった。7日にはメイン州の選挙人1人、8日にも激戦州のネヴァダ州の選挙人6人を獲得することが確実となり、獲得した選挙人は301人に増えた。 米東部時間9日午後(日本時間10日午前)の時点で、アリゾナ州でもトランプ候補が勝利する見通しとなり、トランプ次期大統領が獲得した選挙人は計312人に達した。 ハリス候補が獲得した選挙人は226人。 開票結果予想では、トランプ候補はケンタッキー、インディアナ、ウェストヴァージニア、フロリダ、アラバマ、ミズーリ、オクラホマ、テネシー、サウスカロライナ、アーカンソー、ノースダコタ、サウスダコタ、ワイオミング、テキサス、ルイジアナ、モンタナ、ユタ、ミシシッピ、オハイオ、アイオワ、カンザス、アイダホ、ノースカロライナ、ジョージア、ネブラスカ、ペンシルヴェニア、ウィスコンシン、アラスカ、ミシガン、ネヴァダ、アリゾナの各州で勝利する見通し。 一方、ハリス候補は、ヴァーモント、コロンビア特別区(首都ワシントン)、メリーランド、マサチューセッツ、デラウェア、ロードアイランド、ニューヨーク、イリノイ、コロラド、カリフォルニア、オレゴン、ワシントン、ハワイ、ヴァージニア、ニューメキシコ、コネチカット、ミネソタ、ニュージャージー、ニューハンプシャー、メインの各州で勝つと予想されている。 今回の大統領選では七つの激戦州が勝敗の鍵を握るとされた。アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネヴァダ、ノースカロライナ、ペンシルヴェニア、ウィスコンシン、アリゾナの全7州で、トランプ候補が勝利を確実にした。 調査会社エジソン・リサーチなどによる東部時間5日午後10時過ぎの調査結果では、激戦州のうちジョージア、ノースカロライナ、ペンシルヴェニアでトランプ候補がリードしているとされ、アリゾナ、ミシガン、ウィスコンシンではハリス候補が優勢とされていた。 ■「黄金期を迎える」と次期大統領 トランプ候補は、6日午前2時半(日本時間午後4時半)ごろ、フロリダ州ウェストパームビーチの選挙対策本部の大型ホールのステージに妻メラニア・トランプ氏らと現れ、会場を埋め尽くした多数の支持者らを前に演説。「これはアメリカ国民にとって壮大な勝利だ。アメリカを再び偉大な国にすることができる」と述べた。また、アメリカは「黄金期」を迎えるとした。 トランプ候補と共に登壇した副大統領候補のJ・D・ヴァンス上院議員も演台に立ち、トランプ候補の選挙活動を「史上最も偉大な政治的カムバック」だと述べた。 ■ハリス候補は一夜明けて演説 ハリス陣営は6日午前2時半過ぎ、ハリス候補がこの夜は演説をしないと発表した。選挙対策本部のある首都ワシントンのハワード大学には多くの支持者が集まっていたが、激戦7州のうちノースカロライナとジョージアの2州でトランプ候補の勝利が確実になったと報じられると、パーティーのような雰囲気は一転し、支持者のほとんどが会場を後にした。 一方、各地のトランプ候補の支持者らの間では祝賀ムードが広がった。フロリダ州の選対本部のホールでは、トランプ候補が演説のため登場すると、支持者らが「USA! USA!」と歓喜の声を上げた。 ハリス副大統領は6日午後、首都ワシントンにある母校ハワード大学のキャンパスで支持者を前に、敗北を認めたうえで、「アメリカの約束の光は常に、まぶしく輝き続けます。私たちが絶対に諦めさえしなければ、私たちが戦い続ければ」と語りかけた。 ■外国首脳らがトランプ候補を祝福 トランプ候補の「勝利演説」を受け、外国の首脳らの一部には、トランプ候補に祝福のメッセージを伝える動きがみられる。 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「史上最も偉大なカムバック、おめでとうございます! あなたのホワイトハウスへの歴史的な復帰は、アメリカの新たな始まりと、イスラエルとアメリカの偉大な同盟関係を強力に確認するものになる」、「これは大勝利だ!」と述べた。 ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相も「アメリカ政治史上、最大のカムバックだ!」とし、「大勝したドナルド・トランプ大統領、おめでとうございます。世界が大いに必要としていた勝利だ!」とした。 イギリスのキア・スターマー首相は、「歴史的な選挙での勝利」だとし、「これから一緒に働くことを楽しみにしています」と述べた。さらに、「最も近い同盟国として、自由、民主主義、進取の気性という共通の価値観を守るため、私たちは肩を並べて立っている」、「経済成長から安全保障、そして技術革新からテクノロジーに至るまで、英米の特別な関係は今後何年にもわたり、大西洋の両側で繁栄し続けるはずだ」とコメントした。 北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長も、「NATOを通じて、強さをもとに平和を推進するため、再び(トランプ前大統領と)協力していくことを楽しみにしている」と述べた。また、「トランプ次期大統領は一期目を通じて、強力なアメリカの指導力を示した。一期目を経て、欧州の防衛費支出は大きく転換し、大西洋の両側による費用分担を改善し、同盟の能力を強化した。トランプ次期大統領が1月20日に再び就任する時には、前よりも強くなり、大きくなり、前より団結している同盟が新大統領歓迎することになる」と続けた。 ■出口調査が示す投票動向 投票を終えた有権者を対象としたエジソン・リサーチなどによる出口調査(東部時間5日午後5時現在)では、今回の大統領選で最も重視した問題を五つの選択肢から選んでもらったところ、民主主義の現状(35%)、経済(31%)、人工妊娠中絶(14%)、移民(11%)、外交(4%)の順となった。 ハリス候補に投票した人の約6割は民主主義の現状を、トランプ候補に投票した人のほぼ半数は経済を、それぞれ最も重視したとした。 また、同午後8時半現在の出口調査の結果では、女性の54%がハリス候補、44%がトランプ候補に投票していた。前回の大統領選では、女性の57%がジョー・バイデン大統領(民主党)に投票したため、この時点ではハリス候補はそれを下回っていることになる。 男性は54%がトランプ候補、43%がハリス候補に票を投じていた。 投票に関して大きなトラブルは報告されていない。連邦捜査局(FBI)は、いくつかの州で虚偽の爆破予告があったとし、ロシアが関与しているとの見方を示した。 各地の当局などによると、ジョージア州では虚偽の爆破予告が5件あった。ミシガン州では選挙に関連した脅迫をしたとして2人が逮捕され、メイン州でも警察に事件を予告するいたずらの通報が各地であったとされる。 今回の大統領選では、8200万人が期日前投票をしたとされる。 ■両候補がSNSで投票呼びかけ 5日朝に投票が始まるとハリス、トランプ両候補はそれぞれ、支持者らに向けてSNSで発信した。 ハリス候補はソーシャルメディア「X」で、「アメリカ、皆さんの声を届ける瞬間です」、「投票締め切りまですべての有権者に働きかけられるよう、手伝ってください」などと書いた。 トランプ候補は投票開始を受けて「X」で、「公式に投票日だ! アメリカの歴史で一番大事な日になる。有権者の熱意はずば抜けている。みんな、アメリカを再び偉大にしたいからだ。ということは、行列は長くなる! どれだけ時間がかかってもみんなに投票してもらう必要がある。列から外れないで!」などと投稿した。 アメリカではこの日、大統領選のほか、大統領の政策が法制化され実現するかを大きく左右する連邦議会選も同時に行われた。連邦上院(定数100)の3割にあたる34議席が改選対象のほか、下院(定数435)は全議席が改選された。 上院は共和党が過半数議席を獲得する見通しとなった。ウェストヴァージニア州とオハイオ州で新たに議席を得た。 選挙前は、無所属議員を含む民主党会派が51議席、共和党が49議席を保持しており、実質的な過半数は民主党にあった。 下院でも、結果が確定していない選挙区が残っているが、共和党がリードする情勢となっている。 さらに有権者は州ごとに、その州の重要課題についても投票した。中絶の規制に関する住民投票は、激戦州アリゾナとネヴァダを含めて10州で行われた。 注目されていたフロリダ州では、中絶権の保護を復活させる手続きが否決された。一方、中絶権を支持する政策は、これまでのところ6州で可決された。 大麻の医療利用や娯楽利用については、フロリダ、ネブラスカ、ノースダコタ、サウスダコタの4州で投票にかけられた。 (英語記事 Donald Trump sweeps to victory in historic comeback)
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