「浅間山、お前もか…」 御嶽山、本白根山に続き噴火警戒レベル1で噴火
7日夜、群馬・長野県境の浅間山(2568メートル)で小規模な噴火が発生した。気象庁によると、噴煙は火口上1800メートル以上の高さまで上がり、大きな噴石が火口からおよそ200メートルまで飛んだ。 噴火は約20分間継続したが、地元から降灰を確認したという連絡以外に、現時点では目立った被害は確認されていない。 ただ、今回、明瞭な前兆現象がないまま、「噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)」のままいきなり噴火したことの意味は小さくない。
「正直な山に裏切られた」
「浅間山は正直な山だという認識だったが、今回は裏切られてしまった」。浅間山の突然の噴火を受けて8日未明に行われた記者会見の後、気象庁火山課の職員の1人が口にした。「これまで、浅間山は噴火前に、山体の膨張や火山ガスが増えるなど、きちんとシグナルを出していたのだが…」 シグナルを出していたからこそ、これまでは噴火警戒レベル「1」→「2」(火口周辺規制)→「3」(入山規制)というように、順を追ってレベルを引き上げられた。浅間山で前に噴火が発生したのは2015年6月19日だが、この時は、噴火の8日前の6月11日にレベルを「2」に引き上げ、ある意味、万全の態勢で噴火を迎えることができていた。 しかし、今回、気象庁が浅間山の警戒レベルを引き上げたのは、小規模な噴火を確認した後の7日午後10時半だ。「『小~中噴火の発生』があった時は『3』に引き上げる」という基準に従った形だが、結果的に「小噴火の可能性」がある時に発表する「2」は飛ばされた。
御嶽山、本白根山に続いて…
戦後最悪の火山災害となった2014年9月の御嶽山噴火や、スキー場のゲレンデで訓練中の自衛隊員が亡くなるなどした2018年1月の本白根山噴火。これらはいずれも噴火警戒レベルが「1」の状態で噴火している。 そして、今回の浅間山だ。御嶽山、本白根山に続く「1」の状態での噴火に「浅間山、お前もか…」とつい口にしたくなる。 浅間山の場合は、「1」の状態でも火口付近立入禁止(火口から500メートル以内規制)とされている。今回、気象庁が確認した大きな噴石は200メートルとしており、これが全てであれば、突然の噴火ではあったが、今回の事態には備えることができていたと言えなくもない。 ただ、それは「たまたま」と考えたほうがよいだろう。当然だが、自然の営みを完全に予測するのは困難で、噴火の規模がこれより大きかった可能性はゼロではないからだ。 正直な山だと思っていた浅間山の前触れなしの噴火は、「噴火警戒レベルによる防災対応には限界があるのだ」ということを改めて私たちに知らしめた。 記者会見で、気象庁の加藤孝志・火山課長は「1でも活火山であることに留意するよう呼びかけている。警戒の呼びかけについて、どうすればいいか、現状の課題も含めて精査した上で考えたい」と話した。火山噴火の場合、自然現象としての規模の大小と被害の大小は必ずしも比例しない。だからこそ、噴火警戒レベルを活用した火山防災を今後も続けていくのであれば、「噴火警戒レベルの限界」と「『活火山であることに留意』が持つ意味」を伝える工夫がこれまで以上に必要になるだろう。 飯田和樹・ライター/ジャーナリスト(自然災害・防災)