《ブラジル》梅田邦夫著『ブラジル日系人の日本社会への貢献』東本願寺門主からプロレスラーまで 日本とブラジルの関係問い直す1冊
元駐ブラジル日本国全権大使の梅田邦夫さん(69歳、広島県出身)が、10月に日本で『ブラジル日系人の日本社会への貢献』(東京図書出版)を刊行した。大勢のブラジル日系人が日本社会の様々な分野で貢献する様子や、歴代の皇室や政界から彼らに向けられる温かい思いをまとめた、読み応えのある1冊だ。 「はじめに」によれば本書を書いたのは、次の4点の理由による。(1)日本人は「日系人」のことをもっと知って、大切にしなくてはいけないと考える。南米諸国で日系人は勤勉、誠実、約束を守るという肯定的イメージを確立しており、それが当該国における日本や日本人の信頼につながっている。 また海外の日系社会は世界最大の日本の応援団であり、日本食や柔道、茶道をはじめ日本文化の力強い伝道者でもあると梅田氏は力説する。 (2)日本社会の様々な分野で貢献する日系伯人が多数存在している事実を多くの人に知ってほしい。その代表格としてサッカーのセルジオ越後氏、アントニオ猪木氏、東本願寺第26代門主の大谷暢裕(ちょうゆう)氏、元外交官や弁護士ら多彩な人材を挙げる。 本書の第1章は彼ら10人へのインタビューが列挙され、「アイデンティティの確立を含め、様々な困難を克服しつつ人生を歩んでおり、その発言内容には感動させられる」と記す。 『ブラジル日系人の日本社会への貢献』(梅田邦夫著、東京図書出版)
(3)現在日本に住む日系人が直面する課題と「外国人との差別のない共生社会実現」のために、第2章では武蔵大学のアンジェロ・イシ教授からの提言が具体的に書かれている。イシ氏は、日系人を受け入れることは他の外国人を受け入れることとは意味が違うと強調し、《日系人をいつまでも非正規・非熟練の代替可能な労働力として使い捨てするのはもったいない。彼ら彼女らが秘める可能性、ブラジルでの学歴や職歴、オンリーワンのポテンシャルが活かされる、新たな受け入れ策が望まれる》と訴えている。 (4)日本の皇室と政界の日系社会に対する「温かい思い」を多くの人に知ってほしい。梅田氏は大使在任中、2014年のサッカーW杯ブラジル大会への高円宮妃久子様(日本サッカー協会名誉総裁)、日伯外交樹立120周年を祝った2015年の秋篠宮同妃両殿下のご来伯など随行し、「皇室の方々の日系社会に寄り添う温かい姿勢に特別のものがある」と痛感したという。