新規参入くふうハヤテの池田球団社長「地域に支えられながら成長していつか日本一」インタビュー
今季からウエスタン・リーグに新規参入したくふうハヤテが22日、本拠地ちゅ~るスタジアム清水で秋季キャンプを打ち上げ、グラウンドでの今季活動をすべて終えた。1年間を走りきった池田省吾球団社長(50)が日刊スポーツのインタビューに応じ、今季の総括や2年目以降への思いを語った。【取材・構成=前田和哉】 ファームリーグ拡大に伴い、県内初のプロ球団として誕生した「くふうハヤテ」。初挑戦となったウエスタン・リーグの今季成績は、28勝8分け84敗で最下位の6位だった。 池田社長 もっと勝利を求めていく姿勢は当然、必要。ただ勝利だけでなく育成と再生にも気を使ってもらいながら、選手たちも成長した。自分の中では健闘したと思っている。 チームは「育成と再生、勝つ」をテーマに掲げ、前例なき戦いに挑んだ。セ・パ12球団の2軍相手に負けが込んだ。それでも赤堀元之監督(54)は多くの選手に出場機会を与え続け、底上げを図った。 池田社長 頻繁に会場に足を運んでくれるNPB関係者の方にも「チームの成長が目に見えてわかる。めちゃくちゃおもしろいね」と言ってもらえた。年間を通して、勝ち数には現れない成長も見えたと思う。 増田将馬外野手(26)が、盗塁王を獲得。打率2割9分7厘で首位打者争いも演じた。元オリックス西浜勇星投手(22)はヤクルトへ育成契約で移籍し、NPBに復帰。今秋のドラフト会議では、早川太貴投手(24)も阪神から育成3位で指名を受けた。 池田社長 最低限の目標はクリアできたと思う。これ(セ・パ12球団への輩出)がなければどうしようかと思っていた。西浜の再生と早川の育成、両方を達成できて本当に良かった。 観客数は、ホーム63試合の1試合平均が866人だった。イースタン・リーグも含めた14球団の平均1036人を下回ったものの、9試合が悪天候の影響で中止となる中で目標の計5万人を達成した。 池田社長 最低限の目標が、1試合平均700人の5万人だった。試合数が減っても到達できた。こちらも、最低限のラインはクリアできたと思っている。 6月には県野球協議会に加入し、地域のイベントにも選手らを積極的に派遣した。ホームゲームでは、選手や監督によるファンの見送りも実施。写真撮影やサインに応じた。 池田社長 地域密着の球団。当たり前だと思っている。そこは変えてはいけない。チームを強くしていくだけでなく、もっと静岡に貢献できることも積極的にやっていきたい。 チームが見せた成長に加え、さまざまな施策も奏功。少しずつ「くふうハヤテ」は市民、そして県民に浸透した。9月29日の阪神との最終戦には、開幕戦の1631人を超える本拠地ちゅ~るスタジアム最多の2355人が詰めかけた。 池田社長 (球団代表を務めた四国IL・香川では)最終戦で開幕戦の観客数を越えた経験がなかった。開幕戦とは全く違って「応援する」という雰囲気もできあがっていた。少しずつ認知をしてもらい「球場に行こう」と思ってもらえるようになってきたのかなと実感できた。 一方で、大きな課題もある。1年目のスポンサーは約15社にとどまった。安定した球団経営には、スポンサーの確保は欠かせない。 池田社長 最初は「本当に新しいチームが出来るの?」と疑問を抱いていた地元企業の皆さまにも、具体的な話を聞いてもらえるようになり始めた。本当にこれから。立ち上げで運営も手伝わなければいけない状況だった営業担当の体制を整えて、50社ぐらいを目指していきたい。 来季は今季の数字が基準となり「1年目だから」の“猶予”もなくなる。 池田社長 2年目だから越えなければいけないハードルも多くなる。使命感を持って、1つずつ越えていきたい。地域に支えられながら一緒に成長して、いつかはファームリーグで日本一。5年、10年かかるかもしれないけど「育成と再生、勝つ」を実現したい。 まだスタートを切ったばかりの新球団。くふうハヤテの挑戦は、これからも続いていく。