「13人に重軽傷、3人をなぶり殺し」にした事件、いじめ加害者は「遊んだだけ」と言った
学校とはどのような場所なのか、いじめはなぜ蔓延してしまうのか。学校や社会からいまだ苦しみが消えない理由とは。 【写真】じつは知らない、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃! いじめ研究の第一人者によるロングセラー『いじめの構造』で平易に分析される、学校でのいじめ問題の本質――。
【事例・遊んだだけ】
横浜で中学生五人を含む少年グループが次々と浮浪者を襲い、一三人に重軽傷を負わせ、三人をなぶり殺しにする事件が起きた。その後の調べで、「遊び」としての浮浪者襲撃は八年前から子どもたちの世界では「常識」になっていたことがわかった。 人権派のジャーナリスト青木悦は、地元の中学校で浮浪者襲撃事件について講演をした。大人たちが「人を殺したという現実感が希薄になっている」といったことを話しているとき、中学生たちは反感でいっぱいになった。ほとんどの生徒たちは挑戦的な表情で、上目づかいににらんでいる。 突然女生徒が立ち上がり「遊んだだけよ」と強く、はっきり言った。まわりの中学生たちもうなずく。 「一年のとき、クラスで"仮死ごっこ"というのが流行ったんです。どちらかが気絶するまで闘わせる遊びなんですが、私は『ひょっとしたら死んでしまうんじゃない? やめなさいよ』と止めました。そしたら男子が『死んじゃったら、それはそれでおもしろいじゃん? 』というんです。バカバカしくなって止めるのをやめました」 「ほんとに死んじゃったら遊んでいたみんなはどう思うんだろう?」耐えかねたようにひとりの教員が言った。 「あっ、死んじゃった、それだけです」別の生徒が語りはじめた。「みんな、殺すつもりはないんです。たまたま死んじゃったら事件になってさわぐけど、その直前まで行ってる遊びはいっぱい学校の中であります」 彼らは、どちらかといえば"優等生"的にふるまう、普通の中学生たちだった。 (青木悦『やっと見えてきた子どもたち』あすなろ書房より)
【事例・先生なんかきらいだ】
社会学者・竹川郁雄が参加した、いじめに関する調査(小学六年生、中学二年生対象、一九八四年)の自由回答欄に、いじめをしているある女子中学生は次のように記入している。 「いじめは良くないと思うがやっている人だけが悪いんじゃないと思う。やる人もそれなりの理由があるから一方的に怒るのは悪いと思う。その理由が先生から見てとてもしょうもないものでも、私達にとってとても重要なことだってあるんだから先生たちの考えだけで解決しないでほしい」 別の男子中学生はこう記している。 「いじめられた人はその人に悪いところがあるのだから仕方がないと思う。それと先生でもいじめられた人よりいじめた人を中心におこるからものすごくはらたつ。だから先生はきらいだ。いじめた人の理由、気持ちもわからんくせに」 (竹川郁雄『いじめと不登校の社会学』法律文化社より)