「ロシアの英雄」が一転、孤立無援に…海外へ亡命した女性ジャーナリストを徐々に蝕んだロシア政府の「恐ろしすぎる手口」とは
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第24回 『「ここは危険です」「何も言わずに車に乗って」…ロシアに追われ、ウクライナにも拒絶された女性ジャーナリストの「決死の逃避行」』より続く
編集者からの音信が途切れる
「オデーサリポートはいつ編集できるんですか? 原稿は書き終えています。編集マンが必要です」 飛行機がベルリンに着陸すると同時に、わたしは『ヴェルト』にメッセージを送った。返事はなかった。 金曜日だった。2晩寝ていなかった。疲れ果てていたが、仕事は仕事だ。 ホテルの枕のそばに携帯を置いて返事を待ちながら、着替えもしないままベッドに横になった。いつでも編集に駆け付ける準備はできていた。 目が覚めたら土曜日の朝だった。返事はない。ジリジリしながら一日が過ぎた。日曜日も携帯は黙ったままだった。どうなっているのか見当がつかなかった。月曜の夜になってようやくメッセージが来た。 「『ヴェルト』の幹部は明日16時にあなたをお待ちします」 編集についてもオデッサの素材についても一言もなかった。何もかも変だ。約束の時間を待ちながら、ニュースサイトとSNSをスクロールした。 わたしの投稿の下にあるコメントや、わたしの名前が出ている投稿を読めば読むほど、恐ろしくなってきた。コメントは毒をまき散らし、投稿者は恥ずかしげもなく感情をあらわにしていた。
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