「掌返しとはこのことか」…窪塚洋介の独占告白「マンションから落ちた時に本当の人生が始まった」
「マンションから落っこちた時に自分の本当の人生が始まった。文字通り、自分の人生に飛び込んだんです」 【画像】笑顔でインタビューに応じる窪塚洋介 どこまでも真っ直ぐな眼差しで俳優・窪塚洋介(45)は悠々と語り始めた。 「すごくピュアで無防備でした。だから、インタビューで語った言葉がいいように編集され、勝手な解釈をつけられて放送されることに戸惑い、傷ついた。そんなヤツらに利用されたくないと肩肘張り、すべてを拒むようになっていたんです」 自宅マンションの9階から転落したのはその最中(さなか)、’04年6月のことだ。当時25歳だった窪塚は奇跡的に命に別状はなかったが、頭蓋骨の開放性骨折などの重傷を負い、俳優生命が危ぶまれた。なぜ落ちたのか、自分でもわからない――そう話す彼に世間は″ぶっ飛んだヤツ″というレッテルを貼った。 「今でこそ新しい人生への大ジャンプだったって言えるけど、その時はどん底まで落ちましたよ。気が付いたら身体中がとんでもなく痛いし、業界の人は皆、サーッといなくなって。掌(てのひら)返しとはまさにこのことか、と笑いすら込み上げてきました」 ゼロどころかマイナスからの再スタートだったという窪塚を支えたのは仲間の存在だった。10代の終わりに地元の横須賀から東京に引っ越した窪塚は、クラブや好きなファッションを通して知り合う仲間からたくさんの刺激を受けたという。「世界が一変するなかで彼らだけはまったく変わらず接してくれた」と振り返った。復帰して間もなくレゲエDeeJay『卍LINE』として音楽活動を開始しているが、レゲエを教えてくれたのも仲間たちだった。 「19歳の時に仲間と初めてジャマイカに行ったんですけど、ジャマイカではレゲエが生活の一部なんです。そして、そこには国家権力や社会のシステムに対する批判や反骨精神が込められている。その光景が当時の自分とすごくシンクロして、たちまちのめり込んでいきました」 ◆やりたい仕事だけを選ぶ レゲエDeeJayを始めてからしばらくは、「俳優業は副業になっていたな」と窪塚は笑う。 しかし、けっしてオファーがなかったわけではない。実際、復帰後すぐにゴールデン帯のドラマ出演の話を持ちかけられたというが、迷うことなく断った。その後、「民放ドラマには出ません」と堂々宣言し、話題をさらっている。 「あるテレビドラマの撮影現場で監督がモニターの前でスポーツ新聞を読んでいたんです。その向こうでは俳優が演技をしているのに『何やってんの!?』って憤(いきどお)りを感じた。もちろん、みんなが皆そうだとは思わないけれど、予算も時間もなく台本を練ることもできないから情熱が削(そ)がれてしまう。″ああ、ここは俺の居場所ではないな″と直感して、映画で頑張っていこうと思ったんです」 だからこそ、今年4月に26年ぶりに復活した大ヒットドラマのスペシャル版『GTOリバイバル』(フジテレビ系)で、23年ぶりに民放ドラマに出演した時は大反響を呼んだ。 「主演の反町隆史さんご本人から連絡をいただきました。当時の主要メンバーが集まるというので、『それならば……』と思い、お祭り感覚で出演を決めたんです」 そうは言うものの、民放ドラマに出ないスタンスは今後も崩さない。 「近年は配信ドラマに出てるし、ドラマが嫌なわけではないんです。一番大事なのは台本の面白さ。これまで台本を読んで心からワクワクした役だけを演じてきた。自分が食べていくために仕方なく仕事を受けたことは一度もないし、それをするくらいならどこかで別のバイトをしたほうがマシだと思うんですよ」 本当にやりたい仕事だけを選び、向き合っていくうちに、自然と理想の自分に近付いていた。だから、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』(’17年公開)のオーディションで重要な役をつかんだ時は、「自分のことを待っていてくれた作品かもしれない」と感じたという。江戸時代初期のキリシタン弾圧下の長崎が舞台で、裏切り者の日本人・キチジローを演じた窪塚にスコセッシ監督は「心から正直に演じていた」と称賛を送っている。 「今でも鮮明に覚えているのは、その年の『沈黙-サイレンス-』ジャパンプレミアに出席した日のこと。新幹線で向かう途中、関ヶ原のあたりで視界が開けて一面に真っ白な銀世界が広がったんです。それを見た時、あの事故があったから今があり、そして今日からまた新しいステージが始まるんだ――って思えたんです」 この直後に個人事務所を設立。今は創業400年の老舗酒蔵が造る有機純米酒プロジェクトへの参画や、ゴルフアパレルブランド『8G SHOOT』のプロデュースなど、ジャンルにこだわらず活動の幅を広げている。とくに、自らを『窪塚″腸″介』と名乗るほどこだわって取り組んでいるのが「腸活」だ。なるべく添加物や農薬を使っていない食材を選び、寝る3時間前は何も食べない。そうすることで心も身体も健康になるのだという。 「だからといってお酒や煙草をやめたりはしません。好きなものを我慢してストレスを抱えることが一番良くないから。バランスをとることが大事なんです」 自分らしい生き方や媚(こ)びない発言は時に憧れられ、時に誤解も受ける。過去には、厚生労働省の麻薬取締官から家宅捜索を受けたと、SNSで報告している。 「昔からそういった報道があるたびに『アイツもだろ』って疑われ、何度否定しても信じてもらえなかった。だから大勢で乗り込まれた時は、ようやく潔白を証明できると思いましたよ。でも、無実だと報道されないんで自分から発信したんです」 かつてはピュアだから傷つけられた。だからといって過去を否定はしない。 「今回の『GTOリバイバル』や昨年ネットフリックスで配信された『池袋ウエストゲートパーク』の反響がすごく大きくて、20代前半の頃の仕事が想像よりもはるかに社会に影響を与えていたことに気付いた。あの時、全力でやってよかったと思うし、今の支えにもなっている。よく自分は″コドナ″だって言うんです。世間知らずのコドモではいられないけど、世間に迎合し、夢を奪われたオトナにもなりたくない。これからも″コドナの心″を持って柳のようにしなやかに人生を楽しんでいければいいなって思います」 澄んだ瞳のまま成熟した名優は、これからも世間を驚かせてくれるだろう。 『今後も民放ドラマに出演しないスタンスは崩しません』 『FRIDAY』2024年8月23・30日合併号より
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