ドル安見越したポジション縮小-トレーダー、米選挙控えリスク考慮
(ブルームバーグ): ドルについて強気と弱気の見方で1年間揺れ動いていた投機的な為替トレーダーが、米大統領選を間近に控えこの3年で最も大きな動きに出た。
ヘッジファンドと資産運用会社は10月2週目にドルのショートを差し引き約80億ドル(約1兆2100億円)減らした。これは新型コロナウイルス禍のさなかだった2021年以来最大規模。
米商品先物取引委員会(CFTC)が公表しブルームバーグが集計したデータが示した。ドル安を見越したポジションは今月に入る時点で130億ドルを超えていたが、今では差し引きゼロに近づいている。
TDセキュリティーズの外為・新興国市場戦略担当グローバル責任者マーク・マコーミック氏は21日のリポートで「米選挙まで数週間となり、市場はそのリスクを無視できなくなっている」と指摘。「市場にとって大きなテールリスクを伴う結果が考えられる」とした上で、「ドルを手放さないようにすべきだ」と論じた。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は今月これまでに約2.8%上昇。月間として2年ぶりの大幅な上昇率となる方向だ。
ドル高ヘッジのコストは、ドルに強気なポジションに対する新たな関心を反映している。今後30日間のドルについてプットと比較したコールの価格がこの1カ月に急上昇し、現在は7月以来の高水準にある。
シティグループによると、債券トレーダーは金利や為替などさまざまなポートフォリオ・資産クラスでエクスポージャーを減らすことで選挙リスクをヘッジしている。20年には、選挙数日前にユーロやメキシコ・ペソ、チリ・ペソなどの売りが進行したと、ダーク・ウィラー、ヤスミン・ユネス両氏らストラテジストが最近のリポートで分析した。
大統領選の勝者がハリス副大統領ではなくトランプ前大統領と見込んだ取引は投票日直前に利益確定売りが出る可能性はあるが、短期トレーダーはドル買いなどを進めているという。
同行ストラテジストは「選挙結果が予測できないため、不確実性の領域に入りつつある」とした上で、「少なくとも、可能性が高いシナリオにぜい弱な取引に関しては、ポジションとポートフォリオのリスク軽減が短期的なけん引役になると考えられる」と指摘した。