<あなたの“ギモン”直撃リサーチ> いま「点心」が活況 背景に円安【WBS】
食材の高騰で飲食店経営の厳しさが増す中、「点心」の店が活況を呈しています。背景を探りました。 東京・三鷹市の幹線道路沿いにある「飲茶TERRACE桃菜」。店内に入ると、中華風の内装に、厨房からは何と大量の湯気が。蒸し料理などを中心にした点心の専門店です。汁がじゅわっと出てくる小籠包や、海鮮焼売などがメニューに並びます。 点心の店は昔からありますが、なぜ今、人気が高まっているのでしょうか。この店では3種類の食べ放題コースを提供。49品から選べる一番高いコースでも、およそ3500円。小学生以下はどれも1000円ほどです。 実はここは外食大手「すかいらーくホールディングス」の店で、以前は「ガスト」でした。円安による食材や燃料の高騰などで、外食産業は値上げが相次いでいますが、既存の店舗の活用のほか、グループで食材を大量に安く仕入れられることで手頃な価格を実現できています。 さらに、「すかいらーくホールディングス」執行役員の梅木郁男さんは「まだ円安が続いていて、気軽に台湾などに行けない客に、近場で気軽に本格的な飲茶(点心)の文化を体験できる。そこが喜ばれているのでは」と、海外旅行が以前よりも割高になる中、現地の雰囲気を味わえる点心が受けていると話します。そこで、すかいらーくは今年31店舗のうち12店舗を点心専門店に変えたのです。
点心活況の影響は、日本最大の中華街・横浜でも。繁華街から1本入った路地裏。そこに人だかりができていました。客のお目当ては、自宅で楽しめる肉まんやあんまんなどの点心を手頃な価格で販売する店「大珍キッチン」。この店の点心は、なぜここまで客を魅了するのでしょうか? 製造現場に入ってみると、作っていたのは点心師。実は中国では点心を作るのは国家資格で、中国出身の賈紅艶さんはその中でも上位の1級の保持者です。 「やっぱり技術もすごい。皮の加工する技術。中の肉を作る技術も優れている」(「大珍キッチン」の陸定全代表) こちらの工場は直売だけでなく、業務用の点心をホテルなどに卸しています。その注文が今、増加。なぜなのでしょうか? 「(点心師の数は)少ないです。コロナ禍でホテルはすごく厳しかった。そのときに点心師が辞めさせられた。その分、点心を作る工場をホテルが探した」(陸代表) コロナ禍で経営が厳しい頃、店やホテルが雇っていた点心師を解雇。今再び雇用しようとしても、ここにも円安の影響が出ています。 「点心師たちがお金を持っているマカオやアメリカ、カナダとかそういうところにヘッドハンティングされ連れて行かれる人が多い」(陸代表) 世界的にも人気が高い点心。有能な点心師の国際的な奪い合いが起きているのです。 「点心師は資格を持っているので、どこでも仕事ができると思っている。日本人は給料を交渉しないが、中国人はすごく交渉する」(陸代表) この店で働く点心師の賈さんも「給料が減るなら点心師は国へ帰る。頑張っても給料が減るならやってられない」と話していました。 海外発の点心チェーンも日本の事業拡大しています。香港の「ティム・ホー・ワン」では、今後東京都以外での出店を計画。台湾の「鼎泰豊(ディンタイフォン)」は先月、高級路線の店舗「自由が丘 デュ アオーネ店」をオープン。差別化を狙うということです。 ※ワールドビジネスサテライト