清原和博(慶大)、渡辺俊介(東大)の息子も。東京六大学野球で奮闘する「2世」たち
今年の東京六大学は正吾だけでなく、プロ野球選手の2世選手が存在感を放っている。ドラフト候補に挙がる吉鶴翔瑛(法政大4年)は中日、ロッテの捕手だった憲治を父に持つ。先発投手として定着した大越怜(立教大3年)の父は、ダイエーで好守の外野手だった大越基。 そして、東大にも有名選手の2世がいる。なんと、親子二代でアンダースローという変わり種。渡辺俊介(元ロッテほか)を父に持つ渡辺向輝(3年)である。 父・俊介はプロ通算87勝を挙げ、2006年、09年のWBC制覇にも貢献したサブマリンだ。ただし俊介は、中学時代は3番手の控え投手だった。アンダースローについて「野球選手として最後の手段」と語っており、若くしてアンダースローに転向することに否定的な立場をとっていた。 向輝は都内屈指の進学校として知られる海城高時代にアンダースローへと転向している。マウンドでのひょうひょうとしたたたずまい、左足を上げて軸足一本でゆったりと立つ姿は父とうりふたつだ。 ただし、父と決定的に違うのはリリースポイント。「世界一低いアンダースロー」と呼ばれた父は地上スレスレの位置でボールを離していたが、向輝のリリースポイントは父ほど低くはない。それでも、向輝はホップして見えるカーブやシンカーを生かして、打たせて取る投球を展開する。 今春は8試合を終えた段階でチームは全敗中だが、向輝は6試合にリリーフ登板して防御率3.38とチーム随一の安定感を見せている。今後は先発マウンドに上がる可能性もあるだろう。 2世選手は偉大な父と比較され、図らずも注目され、苦しむこともあったはずだ。現に正吾は父・和博が不祥事を起こしたタイミングで一度は野球をやめている。それでも、「両親を喜ばせたい」という思いから再び野球のユニフォームに袖を通し、今や神宮を沸かせる強打者に成長した。 清原正吾も渡辺向輝も、それぞれの方法で輝きを放ち始めている。学生野球の聖地で彼らが人生をかけて表現する野球を、心ゆくまで堪能したい。 取材・文/菊地高弘 写真/アフロ