個性派ぞろい 愛媛ご当地スーパーの世界 スーパー日東の巻
愛媛ならではの個性派ご当地スーパーを深掘りする企画。もう1社はスーパー日東を運営する日東物産(松山市)です。前回の木村チェーンと同じく、低価格に定評があり、売上高、利益とも着実に伸ばしています。 帝国データバンク松山支店・豊田貴浩支店長とともに、四国のスーパー主要20社の売上高ランキングを見てみましょう。 2021年度は、フジが圧倒的な規模でトップを走っています。続いて目立つのは4県の生活協同組合です。20社は四国4県に本社を置く企業・団体を対象にしていますので、イオン系列などの県外資本は入っていせん。24年から本社を移転したフジも対象外になります。 この20社の売上高は、値上げの影響もあり年々増加していると前回お伝えしました。しかし、原油高、資材高、人件費などが利益を圧迫しています。 豊田支店長は「22年度の調査では、全国で3割、愛媛は25%の食品スーパーが赤字でした。減益も加えた業績悪化は全国7割、愛媛は81%」と厳しい現状を示します。 人口減少が進む中で「そもそもがオーバーストア状態」と豊田支店長。ご当地スーパーの展望は「大手との価格競争やドラッグストアとの競合もある。特色を出せない中小スーパーは苦しい展開が続きそうです。今後は、大手とは違う差別化で消費者の心をつかむことが、ますます必要になってきます」と分析。買い手側に対しては「地域に根付いた店ならではのよさもある。大手だけでなく幅広く見定めて賢い消費をしてほしいですね」と語っていました。 ■サプライズ!な売り場 スーパー日東 それでは、松山市内に5店舗を展開するスーパー日東の世界へどうぞ。 「サプライズ!」を掲げるスーパー日東は、価格や品質だけでなく陳列やポップ広告でも、来店客が驚くような仕掛けを心がけています。束本店(松山市束本1丁目)では、三津浜の市場で仕入れた魚をトロ箱ごと並べ、量と安さで買い物客を引きつけます。 「祖父は『あずま商店』時代からスイカを軽トラいっぱい仕入れたりして、お客さんをびっくりさせることに喜びを感じていました」と語るのは創業者の孫にあたる東潤美副社長(48)。サプライズの演出は、創業者から引き継がれたDNAともいえそうです。 2013年にはイメージカラーを気持ちを明るくする赤に統一。「SURPRISE!!」を合言葉に「驚くほどの価値」を生み出すという理念を打ち出しました。 16年に社長に就任した服部雅企氏(48)は3代目。東京でコンサルティング関係の仕事をしていましたが、縁あって27歳で日東物産に入社しました。 ■現場力を引き出す 当時は「小松菜とほうれん草の違いも分からなかった」という門外漢。「ただ、未経験だったことがかえってよかった」と振り返ります。「ほかの従業員に何でも聞いて対話を重ね、皆で県外視察も行い、よりよい店舗運営を考えていった」。店長を務めた久米店では1年で2倍近い売り上げ増を実現したそうです。
愛媛新聞社