“ゆあビーム”にリーグトップの打率…プロ6年目で初スタメン、日本ハム・田宮裕涼の捕手力
突出した捕手力に期待
そして強く印象に残っているのが、この年の12月17日に行われた千葉県選抜チームの台湾遠征前の強化試合だ。 田宮は選抜チームの主将として自分の所属している成田と対戦。3回の守備では見事な送球で盗塁を阻止すると、打っても4回の第2打席でライト前ヒットを放つなど活躍。 また第1打席と第3打席のファーストゴロでは一塁到達タイムでいずれも4.2秒台を記録している。捕手でありながら脚力があり、走塁への意識も高かったことがよくわかるだろう。 当時のノートのメモには以下のように書かれている。 「イニング間の送球では余裕を持って投げているためタイムは平凡だが(この日の最速は2.06秒)、実戦では素早い送球で楽々盗塁阻止。地肩も強いが、モーションが素早くなった印象を受ける。 打撃も春に見た時と比べて力強さがアップし、鋭く引っ張りライト前ヒット。凡打もしっかりとらえており内容が良い。 (中略) 異なるタイプの投手のボールも落ち着いて捕球。捕手としての総合力が高い」 スローイングやバッティングはもちろんだが、それ以上にこの日感心したのはメモの最後にある部分だ。 選抜チームでの試合ということもあって細かい継投で、田宮が守備についていた間も3人の投手が登板したが、まったく苦にすることなく捕球、ブロックし、無失点で抑えていたのである。 ちなみにこの時に三番手で登板したのが八千代松陰のエースとして活躍していた清宮虎多朗(現・楽天)だった。 また、特別ルールによって田宮が捕手から指名打者に代わった後に選抜チームは成田から4点を奪われている。そういう点も田宮の捕手としての力が突出していたことがわかるだろう。 冒頭でも触れたようにプロでは二軍暮らしが長かったが、2024年のブレイクを見てもその間に着実にレベルアップを果たしていたことは間違いない。 このままの活躍が続けばオールスター出場はもちろん、近い将来の侍ジャパンの正捕手候補としても期待できるだろう。
TEXT=西尾典文