『佐久間宣行のNOBROCK TV』の「罵倒村」で起きた奇跡とその魅力とは
この村に最もふさわしい人間、錦鯉・渡辺隆の合流
ギアがかかったのは、episode2「新しい扉」だ。プライベートで「罵倒村」を探しに来たという生粋のドM、錦鯉・渡辺が合流。この世には、他人に罵倒されることがなによりの興奮になる人間がいる。「罵倒村」に最もふさわしい人間が来てしまったのだ。 そして渡辺隆が出てきた時点で、もうひとりなくてはならない人物がいることに、勘のいい『NOBROCK TV』の視聴者は気づいただろう。そう、もはや『NOBROCK TV』の顔と言っても過言ではない罵倒ギャル、みりちゃむが村の学校教師として登場。 その圧倒的な罵倒スピードと、並のマゾでは耐えられない悪口で4人を圧倒するのだが、みりちゃむの罵倒を唯一「栄養」として吸収できるのが、渡辺隆なのだ。命令されれば、なんのためらいもなく鼻フックヘルメットを被り、竹刀でしばかれれば「ありがとうございます!」と感謝の言葉を述べる。 みりちゃむ「これが調教された人間だからな」 そう言われて誇らしげな顔をする渡辺に、3人が「見てらんないっすよ」と苦笑いするシーンは、「罵倒村」のハイライトのひとつだろう。 当たり前だが「罵倒」というのは、罵倒する側とされる側の「信頼関係」が何よりも大切なのだと思い知らされる。このふたりを見ていると思わず自分も「罵倒されたい……」と願ってしまう。見事にドMスイッチを押されてしまった。
栗谷の見事な食レポと、芽生えた友情
episode2の名シーンといえば「栗谷の食レポ」だろう。村の学校の教室で待ち受けていたギャル軍団に、罵倒され続ける芸人たち。中でもカカロニ栗谷は「なんで『白黒アンジャッシュ』にも出れてねぇヤツがここにいんだよ」など一段とキツい罵倒を浴びせられ、心が折れかけてしまう。 そんな中、唯一の男子生徒・まさると栗谷の口ゲンカが勃発。さらに「生ワサビの食レポをする」というくだりで、先に挑戦した渡部が大量のワサビを注入させられ悶絶するなか、まさるが口を開く。 まさる「栗谷こんなのできねぇだろ?」 そんな挑発に煽られ、半ば強引に食レポをすることになった栗谷。大量のワサビを飲み込み苦悶の表情を浮かべるが、なんとかワサビを飲み込む。 ところがまさるは、栗谷のガッツを認めつつも「味の感想伝わってこなかったぞ」とさらに挑発。そうして栗谷は、まさかの2回目のワサビ食レポに挑戦することに。さすがにヤバいと判断したまわりが止めようとするも、頑なに止めようとしない栗谷。そんな姿に教室中が罵倒を忘れ、応援ムードになっていく。 「ちょっと……今までの取り返させてくださいよ。一番売れてない奴が一番ちゃんとつまんないんですよ、今のところ! さっきより(ワサビ)全然多くていいっす!」と叫び、大量のワサビを食す栗谷。 「フレッシュだから、ほかの商品とは違いますね……あ、でも辛さの中に甘みがバーっとあって全然ワサビだけで食べれるというか……味が……味が……あ、味……」というと、あまりの辛さからかしばらく静止してしまう。しかしわずかに残った最後の力を振り絞ってひと言、 栗谷「おいひー!」 常軌を逸した見事な食レポを披露した栗谷。限界を超えた、芸人としての執念を見せつけられた。この姿にまさるも栗谷を認め、労いの言葉をかける。 まさる「栗谷、お前やるじゃねぇかよ……でもな、お前な、これはちょっと危なすぎるから編集で切られるぞ」 栗谷「使ってくれって! 危なくないって! 絶対使ってくれ! 全然辛くない! これは切んないでくれ! みなさんがマネしなければ僕が使われます! お願いします!」 この場面が実際に使われていることが、栗谷の勝利の証といえるだろう。 栗谷とまさる。そこには罵倒を超えた、まぎれもない「友情」があった。2020年に「人を傷つけない笑い」という言葉がお笑い界を席巻したが、「人を傷つける笑い」だからこそ起きた最高の映像を、ぜひ目撃してほしい。
文=かんそう