学校では学べない、生き延びたユダヤ人達の証言「ヒトラーを欺いた黄色い星」
クラウス・レーフレ監督は、同映画を企画する前にナチスが諜報活動に使っていた娼館「サロン・キティ」についてのテレビドキュメンタリーの製作に携わった。この娼館の中に偽りの身分証明書を持ったベルリン出身のユダヤ人女性がいたことを知った。レーフレ監督はインタビューで、その発見を興奮気味に語っている。 「これが僕の好奇心を掻き立てたんだ。共同制作者のアレハンドラ・ロペスと一緒に、他にも違法で隠れていたユダヤ人ベルリン市民がいたのかを調べ始めた。これは面白いことになるとすぐにわかった。その人数は数人なんてものじゃなかったから」
どうしてもこの話をノンフィクション映画で撮りたかったレーフレ監督は、歴史家の助けを借りながら、当時の出来事を実際に体験し、目撃した人物を探した。そしてようやくこの4人の証言者に出会えたのだ。 映画の演出方法はとても斬新だ。4人のユダヤ人が証言し、再現映像を差し込む手法を採用している。レーフレ監督は「この4人の物語をできるだけ真実に近く、信ぴょう性があるようにしたかったから、このようなハイブリッド式にしたんだ」と説明する。 また、4人の証言者はすでに人生の終わりの時期に差し掛かっているにも関わらず、意気揚々と活力に満ちた瞳で、自分たちに起きた真実を物語る。それは単なる恐怖と苦労の体験だけではない。これまで彼らの「生」に携わったすべての人への「感謝」の気持ちが語られている。
「彼らはベルリンにいるすべてのドイツ人がナチスだったわけではないことを体験した。よい人もいたんだ。それが印象に残ったんだね。だからといって、寛大に許しているわけではない。でも、和解を差し伸べているんだ。これもこの映画伝えるべきメッセージだと思う」 そして生き延びた者たちは、のちに“東”へ送られた者たちの行く末を知ることになる。生き残ったユダヤ人の語る新しい史実と何十年も埋もれてきた人間賛歌が、同作によって掘り起こされた。いまだからこそ観るべき映画。 (文:小杉聡子)
『ヒトラーを欺いた黄色い星』7/28(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか、全国順次公開、配給:アルバトロス・フィルム、(c)2016 LOOK! Filmproduktion / CINE PLUS Filmproduktion