『幻想のフラヌール―版画家たちの夢・現・幻』6月1日から 幻想を力に表現する多彩な作品を紹介
幻想や記憶をテーマとして版画作品を紹介する展覧会『幻想のフラヌール―版画家たちの夢・現・幻』が、6月1日(土)~9月1日(日)、町田市立国際版画美術館で開催される。 【全ての画像】小林ドンゲ《雨月物語より 浅茅が宿 その1》ほか 版画は、文字通り「版を作る」ことからよく鏡に例えられる。作者の夢想や見る者の願望を映し出し、見慣れた現実からもうひとつの世界へと誘うような表現でもあるのだ。展覧会タイトルの「フラヌール」とは「遊歩者」を意味する。それは自ら創造する世界をさまよう版画家のイメージであるとともに、作品を体験する鑑賞者にも言えることだろう。 今回は企画協力に美術評論家の相馬俊樹を迎え、同館の所蔵品から、幻想の力によって〈アナムネシス(記憶回復)〉を喚起するような作品を紹介する。例えば、言葉を着想の源としながら夢幻の世界を描く小林ドンゲや清原啓子、アンティエ・グメルス、版を鏡として自らの精神を版に刻み、紙面に映し出す日和崎尊夫、柄澤齊、分身ともいえる版に死/生を刻み込むホルスト・ヤンセン、菊池怜司らの作品が並ぶ。 刻み込まれた線を見つめるうちに、自然への畏怖や人間に内在するエロスを感じ、時間や空間の歪んだ世界に没入する、そんな鑑賞体験が楽しめる。6月22日には美学者・谷川渥と企画者である相馬俊樹の対談も行われる。「夢幻」と「現実」、「作品」と「私たち」、「芸術のための芸術」と「生のための芸術」といった境界が溶け合うような、版画の奥深さに触れる機会となりそうだ。 <開催概要> 『幻想のフラヌール―版画家たちの夢・現・幻』 会期:2024年6月1日(土)~9月1日(日) 会場:町田市立国際版画美術館