マイナ保険証を嫌う不思議 紛失時に対応しやすい利点、デジタル化で多くのロスが軽減 「紙」は不正利用のリスク高い
【日本の解き方】 12月2日で紙の保険証が廃止される。紙の保険証にこだわった人たちの意図は何だったのか。 【画像】健康保険証の代わりにマイナンバーカードを利用するための読み取り機 先の衆院選で躍進した立憲民主党の野田佳彦代表は、テレビの選挙特番で、今後優先したい政策について真っ先に「紙の保険証も使えるようにすること」と述べた。実際、立憲民主党は11月12日、現行の健康保険証の廃止を延期するため、「保険証廃止延期法案」を衆院に提出した。 今の政府はどうか。平将明デジタル相は、現行の健康保険証の新規発行を12月に廃止する政府の方針に変更はないとしている。本人確認が可能なICチップが入っていないことを挙げ、「不正しやすい環境にあるので、やっぱり穴をふさぐべきだ」と強調した。 2003年度の厚生労働科学研究費補助金による報告書では「保険情報の誤りや不正使用は、全国で年間600万件にも上っており、その処理のための経費は1000億円を超えると推定されている。多くは単純な保険証の番号の間違いであるが、中には資格停止後の保険証の利用も少なくない」と書かれている。 これが業界常識なのだろう。不正利用だけではないが、デジタル化で多くのロスが軽減できることが示唆されている。 一部マスコミは、マイナンバーカードの保険証としての利用登録の解除を推していたが、11月8日までにわずか792件だった。ちなみにマイナ保険証の登録者数は約7600万人で、「10万人に1人」の低確率だ。 不正利用だけのデータは事の性質上、あまりないが、保険証が繁華街で転売されている事実はよく知られている。運転免許証は、顔写真とICチップが入っているので偽造しにくく、転売もできない。なぜ保険証で同じことをやろうとせず、従来の紙の保険証に固執する人がいるのか筆者にはさっぱりわからない。邪推だろうが、まるで不正利用を勧めるかのような錯覚すら覚えてしまう。 ちなみに、筆者はマイナ保険証を日常的に使用している。とても便利で、マイナ保険証をカードリーダーに置き、「顔認証する」を指定し、「すべて同意」を押せば、終わりだ。しかも、もし紛失したときを考えると、紙の保険証よりはるかにリスクが少ないのがいい。 マイナンバーカードはスマホに取り込まれる。既にアンドロイドのスマホでは23年5月から利用可能だが、iPhone(アイフォーン)でも25年春頃にできる予定だ。そうなると、さらに紛失リスクは減る。今のマイナンバーカードの紛失リスクは銀行のキャッシュカードやクレジットカードなどと同じで、紛失時には電話連絡が必要だが、スマホなら本人以外の利用が困難だし自分で遠隔操作により機能停止できる。