【霞む最終処分】(43)第7部 原発構内の廃棄物 欠かせぬ減容化加速 前例なき廃炉の鍵に
東京電力福島第1原発の廃炉作業で発生した、がれき類など放射性廃棄物の処分方法が定まらない中、東電は原発構内で保管している廃棄物の総量を減らすために焼却・減容処理を進めている。 東電の試算によると、福島第1原発の構内では、11年後の2035年3月までに、約76万立方メートルのがれき類が発生する。焼却や減容化により、このうち約33・8万立方メートルを減らせる見通しで、減容前の半分近くに抑えられる。構内に設置を検討している溶融設備で金属などを溶かすなどすれば、約14万立方メートルを再利用できるという。 ◇ ◇ 2月には、がれき類のうち、放射線量が毎時1ミリシーベルト以下と比較的低い金属やコンクリートを減容処理する設備の運転を始めた。「ギロチン」のような設備で金属を切断し、コンクリートを大型シュレッダーで砕いて容積を半分程度に減らす。量を減らした後は金属製の容器に詰め、屋内の貯蔵庫に保管している。
4月上旬、減容処理設備の操作室に「重機のエンジンを停止せよ」「実行よし」などの指示が響いた。作業員が監視モニターで作業の進み具合を確認しながらトランシーバーで現場を指揮していた。建屋周辺で出たがれき、壊れた台車、ドラム缶、パイプなどが次々と運び込まれ、20センチほどに切り刻まれた。 東電によると、この設備では1日当たり約60立方メートルの金属を処理できる。設備内の風の流れをコントロールするなど、放射性物質が屋外に漏れ出さないよう対策を講じている。 ただ、この日は作業を始めて間もなく設備に不具合が発生。手順書に基づいて対応し、予定していた残りの作業は翌日以降に持ち越した。東電福島第1廃炉推進カンパニー広報担当の高原憲一は「不安がある時は一度、立ち止まることが大事。速さよりも安全第一で取り組む」と語った。 ◇ ◇ 東電は処理水を海洋放出して空になったタンクを解体し、新たにできた敷地に廃炉関連施設を建てる方針を示している。しかし、原発構内で発生し続ける廃棄物を保管するコンテナに阻まれ、施設建設のめどは立たない。資源エネルギー庁廃炉・汚染水・処理水対策担当室現地事務所参事官の木野正登は「汚染水の保管タンクを解体してスペースができても、廃棄物のコンテナがすぐに並ぶ。廃炉作業は思うように進んでいない」と問題視し、廃棄物を持ち出せない現状では減容化の加速が廃炉作業の進展に欠かせないという認識を強調する。
原子力工学を専門とする県原子力対策監の宮原要は「廃棄物対策を適切に講じるには放射性物質の量を適切に把握することが鍵となる。処理や処分の方法を明確にする方策を考えながら取り組む必要がある」と指摘している。 過酷事故を起こした福島第1原発の廃炉は、世界でも前例のない取り組みだ。今後の廃炉作業には最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しをはじめ、原子炉建屋の解体に伴う大量の廃棄物の処理・処分などの困難な工程が待ち受けている。(敬称略) =第7部「原発構内の廃棄物」は終わります=