衝撃の調査結果!PFASが子どもの「染色体異常」に関連する可能性を初めて指摘…信州大学が発表
死産、流産は含まれていない
ただし、この調査では、染色体異常の可能性がありながら分析対象から除外された例が少なくない。 第1に、医師が目視などから「染色体異常」と診断したものの、遺伝子検査を受けていない27例が外れている。 第2に、「人工妊娠中絶」した28例、妊娠12週以降22週以前に「流産」した28例、さらにそれ以降に「死産」した68例の計161例の中にも染色体異常が含まれている可能性があるが、分析対象には含まれていない。 第3に、エコチル調査は「妊娠12週以降」の妊婦を対象としているため、流産が多く起きる妊娠12週以前のデータはもともと含まれていない。 以上をまとめると、今回の調査で、遺伝子検査による診断が行われていない27例を含む188例が検討されていない。また、病院などで確認される妊娠の12~15パーセントは流産に至り、その原因のひとつが染色体異常とされるものの、妊娠初期(12週以前)の流産はそもそも対象外となっている。 こうしたことを考え合わせると、実際の影響はより深刻なものになる可能性があるとも言えるが、現時点ではわからないという。
研究対象地域は「深刻な汚染」が確認されていない場所なのに…
もうひとつ重要なのは、エコチル調査の対象となった全国15地域には深刻な飲み水の汚染が確認されたところはない、ということだ。つまり、低濃度汚染地域でも染色体異常との関連が示唆されたという点は見逃せない。 はたして、沖縄や東京・多摩地区、岡山・吉備中央町など、過去に高濃度に汚染された飲料水が提供され、地域住民の血中濃度が高いとみられる地域での影響はどうなのか。残念ながら、近く実施される吉備中央町を除くと、自治体による血液検査や健康調査が行われる予定はない。 信州大学の野見山教授は「PFASが染色体異常を引き起こすかどうかについて明らかにするためには、生物学的なメカニズムに関する研究や、妊娠前からの追跡調査など、新たな枠組みでのさらなる研究が必要になる」と語る。 論文の発表時に添えられたQ&Aにも「原因となるPFASを特定するためには、さらに大きな集団でのより詳細な検討が必要となります」と書かれている。 だが実際には、エコチル調査のような大規模プロジェクトがほかで行われる見通しはない。だとすれば、今回、染色体異常の可能性が排除できなかった188例について再検証する価値があるのではないだろうか。 いずれにしても、2011年に始まったエコチル調査は対象が10万組と多く、こどもが胎児から40歳になるまでと長い、世界的にもきわめて貴重な疫学調査だ。それだけに、現在、執筆中とされるPFASによるほかの疾患との関連についての論文の発表が待たれる。 現在配信中のスローニュースでは、横田基地からPFOSを含んだ大量の汚染水が漏出したことを米軍が初めて認め、多摩川へ流出したとみられる問題を深く掘り下げている。
諸永裕司