白河厚生総合病院が救急科新設 安田貢医師(福島県白河市出身)と福医大連携 命守る情熱一つに 将来見据え体制構築
白河厚生総合病院(福島県白河市)に新設が決まった救急科は、地域医療を担う関係者が力を尽くして実現させた。4月に42年ぶりに古里の白河市に戻り、同病院の救急担当部長を務める安田貢さん(61)、福島医大の医師らが協力。高齢化に伴い救急搬送が増加する中、「一人でも多くの命を救う」と誓う。 重篤患者を24時間受け入れる「3次救急医療機関」の多くで、救急車に医師を乗せて救急現場で治療に当たる「ドクターカー」の導入が広がっている。だが、3次機関のない県南地方には仕組みがなかった。医療人材の不足により救急患者を地元で受け入れられず、他の地域に搬送している課題もあった。 これまでの自分の経験を生かせないか―。安田さんは自らの知見を古里に還元できないか考えを巡らせた。白河高を卒業後、茨城県の筑波大医学専門学群(現医学群医学類)を経て脳神経外科医となり、脳卒中などの緊急手術で約2千人を執刀。約20年前、茨城県内初の本格的なドクターカー導入に関わった。
今春に白河厚生総合病院に着任し、消防本部と連携してドクターカーの実証事業に取りかかった。通常、半年~1年程度要する準備は約3カ月で整った。 ドクターカーは7月末の実証開始以降、転落事故や交通事故などで計5回出動した。実績を積み重ねる中、福島医大が救急専任の医師2人を派遣できる見通しとなった。 「診療科を設ければ、より動きやすい体制になるはずだ」。安田さんを含めた関係者は話し合いを重ね、県南地方初となる救急科設置を模索し、年明けの開設を決めた。 安田さんはドクターカーの実証事業で救急救命士や研修医、学生への指導にも汗を流す。救急講習を担う認定NPO法人の理事長も務め、JR新白河駅前に常設の研修施設も整備した。「白河で自分ができることはもっとある。将来につながる体制づくりに今後も関わりたい」と前を向く。 白河厚生総合病院長の大木進司さん(57)は「安田先生の指導を受ける若手が成長し、院内の体制が強化できれば、地域にとってさらに良い医療提供体制が構築できる」と住民がより安心して暮らせる環境づくりに意欲を示す。
白河医師会は地域医療の充実に期待を寄せる。医師会長の関元行さん(76)は「救急を専門とする医師の常駐は心強い」と歓迎。医師会として円滑な搬送などに連携して取り組む決意だ。 ■地域偏在解消へ 県外の12人招聘福島県事業で 安田さんは県外から指導医を招き医師の地域偏在解消を目指す福島県の事業を活用。事業では、2021(令和3)年度の開始以降、安田さんを含め12人の招聘(しょうへい)につながった。 若手医師の新たな研修の場となる環境を整備し、県内定着を目指す狙いがある。県医療人材対策室の担当者は「事業に関する発信力を高め、さらなる招聘につなげたい」と話す。