「その土地の素材で土地の風景をつくる」造園家・齊藤太一さんがイタリア庭園から学んだ本物の地産地消
地球と共鳴する心地よい居場所=「グラウンドスケープ」を求めて世界中を旅した造園家の齊藤太一さん。今回はイタリア・フィレンツェにある、インプルネータ村を訪れました。 【写真集】テラコッタの産地・フィレンツェ郊外の村へ!イタリア式庭園と地産地消を学ぶ
フィレンツェから車で30分ほどの郊外にあるインプルネータ村。オリーブとブドウ畑に囲まれた素朴で美しいこの村は、最高級の粘土が採れる土地であり、テラコッタの産地として世界的に名をはせています。今回は世界一の土を使ったソルソオリジナルの鉢をつくれたらという野望も抱えつつ、テラコッタのルーツとイタリア庭園を巡り探る旅に出ました。 フィレンツェのピッティ宮殿裏に広がるボーボリ庭園。メディチ家の繁栄を物語る広大な庭園は、周囲の自然と共生するヨーロッパ宮廷建築・造園のモデルとなったといわれています。
トスカーナ地方には政治・経済的にこの地を支配すると同時に、多くの芸術家のパトロンとしてルネサンス文化を後押ししたメディチ家の宮殿が点在していて、庭と共に世界文化遺産に登録されています。その庭園文化を陰ながら支えていたのがインプルネータ・テラコッタ。昔ながらの製法で職人たちが一つひとつつくり上げる、本物のハンドメイドです。 小路のコーナーや門柱の上に配置された多様な形のプランター、芝生の上に幾何学的に並んだ大きな鉢植え…。どの鉢にも宗教や文化に根付いた意味のある装飾が施されていて、単純に植木鉢としてだけでなく、庭におけるアイコンとして重要な役割を果たしていたことが想像できます。 その土地で採れる素材を使ってその土地の風景をつくる――昔は当たり前だったこんな「地産地消」が、今はレアで高価なものになってしまった。世界中で同じ素材・同じ色が使われ、あらゆるものが「標準化」されてきています。 でもやっぱり、どこへ行っても感動させられるのは、その土地に根ざした「その土地らしい」もの。文化や時代背景が違っていても、その感覚は人のなかにルーツとしてあるんじゃないかな。どこかのまねじゃなく、それぞれの土地の素材や文化をリスペクトし、レコメンドし続けることで、そこにふさわしい景色ができあがっていくんだと思います。 宗教的観点から理想郷を追い求めたダイナミックなイタリアの庭に立つことで、自然そのものにインスパイアされた日本のものづくりとの差も改めて実感しました。 世界遺産にも登録されているイタリア・フィレンツェのボーボリ庭園は、フィレンツェの中央駅「フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅」から徒歩20分ほど。南側にあるヴェッキオ橋を渡って200mほど進んだ場所にあり、一般公開されています。 インプルネータ村はボーボリ庭園からバスで30分ほど。人口約1.5万人の小さな村で、テラコッタ製品だけでなくワインやオリーブオイルの産地としても有名です。 イタリアを訪れる機会があれば、おいしいグルメや美しい景色とともに、数々のイタリア式庭園の魅力を堪能してみては?