石破首相、「持論」アジア版NATOは封印…習近平氏と関係構築を優先
【リマ=太田晶久】石破首相は15日にペルーで行われた中国の習近平(シージンピン)国家主席との初会談で、本格的な対中外交をスタートさせた。関係改善に向けた対話の加速で一致したことを受け、ハイレベルの相互訪問を早期に実現し、日本産水産物の輸入再開など個別の懸案解決につなげられるか力量が問われることになる。
「非常にかみ合った意見交換だった。今後、会談を重ねることを楽しみにしている」。習氏との会談を終えた首相は、記者団にこう手応えを語った。
就任直後の10月には、訪問先のラオスで中国の李強(リーチャン)首相と会談しているものの、対中外交を進めるためには、権力を一手に握る習氏との関係構築が不可欠だ。石破首相は今回、持論とするアジア版NATO(北大西洋条約機構)構想には触れなかった。中国側は、構想を「対中包囲網」とみなしており、習氏を刺激するような事態は避けたかったとみられる。
会談を通じ、戦略的互恵関係の推進のほか、日本産水産物の輸入再開に向けた合意の履行を習氏との間で確認できたことは「一定の収穫だ」と日本政府関係者からも評価の声があがる。
一方で、合意履行の時期について習氏から言及はなく、輸入再開の見通しは立たないままだ。日本政府内では「日本を揺さぶるためのカードとして温存したいのでは」といった懸念もくすぶる。中国軍機による領空侵犯や在留邦人の安全確保など、日中間の課題は山積している。
石破内閣としては来年、日本が議長国を務める日中韓首脳会談に合わせた李氏の来日や、今回改めて確認した日中外相の往来の実現に当面は注力することで、両国間の信頼醸成を図りたい考えだ。