【F1分析】最後の最後まで、極上バトルが続いた初開催ラスベガスGP。デグラデーション”ゼロ”の通常とは異なるレース展開に
初開催となったF1ラスベガスGPは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが優勝。最終ラップでは、フェラーリのシャルル・ルクレールがセルジオ・ペレス(レッドブル)を見事なオーバーテイクで下し、2位表彰台を手にした。 【F1|ハイライト】2023年F1第22戦 ハイネケン・ラスベガスGP 決勝 初日には送水ポンプの蓋が外れたことを発端にFP1が赤旗終了となり、さらにその影響でFP2の開始時刻が大きく遅延……結局深夜2時半からのセッションとなったため、観客がスタンドから追い出されることになってしまった。 そんな最悪な形でスタートを切った、F1きも入りのラスベガスGPだったが、決勝は実に素晴らしいレースになった。 サーキットがカジノで有名なラスベガスの中心街に特設されているため、華やかな雰囲気で走ったというのも、当然ひとつの要素になった。しかしそれ以上に重要だったのは、レース中各所で様々なバトルが繰り広げられ、それがレース終盤まで続いたということだろう。 たしかにコースレイアウトもその一翼を担ったはずだが、レースペースを見ていくと、もうひとつその理由となった要素が見えてくる。通常のレースとは、ペースの推移が大きく違っているのだ。
■デグラデーションほぼゼロ? 走れば走るほど速くなるペース
このグラフは、今回のラスベガスGPで表彰台を獲得したフェルスタッペン、ルクレール、ペレスのレース中のペースを折れ線グラフで示したモノである。 いずれのドライバーのペースも、僅かながらではあるものの、右肩上がりになっているのがお分かりいただけるだろう。 通常ならば周回を重ねると、タイヤの性能が徐々に劣化していき、ラップタイムが落ちていくものだ。これがデグラデーションと言われるモノである。しかし今回のレースでは、デグラデーションが見られず、逆に周回を重ねるに連れて徐々にペースが上がっていった。なぜペースが上がるのかといえば、走れば走るほど、スタート時に搭載していた燃料が減っていくからである。 またこれも通常ならば、タイヤを交換すれば一気にベースとなるペースが上がるものだ。しかしフェルスタッペンも、そしてルクレールも、タイヤを交換してもそれほどペースが上がらなかった。これもタイヤの性能劣化があまりなかったためであると言えるだろう。 結局フェルスタッペンとペレスは2ストップでレースを走り切ったが、ルクレールは1ストップ。ペレスも実際には2ストップだったが、1回目のピットストップは1周目であり、実質的には1ストップでレースを走り切ることができたと言えるだろう。 タイヤの性能が劣化する主な要因としては、タイヤの接地面であるトレッドのゴムが摩耗してしまうこと、そしてタイヤがオーバーヒートしてしまうこと(サーマル・デグラデーション)が挙げられる。しかし今回のレースでは、路面がスムーズであったため摩耗が進みにくく、さらに気温や路面温度が低かったことで、オーバーヒートしなかったという点が挙げられるだろう。 一方で各ドライバーは、グレイニングに苦労したと報告している。グレイニングとは、タイヤがしっかりとしたグリップを発揮しないことで横滑りしてしまい、トレッド面が毛羽立つように削れてしまう摩耗のこと。気温や路面温度が低いことはその一因になると言われている。 タイヤのゴムは、しっかりと温めなければ、想定されたグリップを発揮することができない。これが「作動温度領域に入れる」ということだ。この領域に入らなければしっかりとしたグリップを発揮せず、コーナーで横滑り……グレイニングが起きてしまう。グレイニングが起きると、タイヤの表面積が拡大して、冷えやすくなってしまう。当然、接地面積にも影響が及ぶ。 ただうまくコントロールできれば、グレイニングは解消することができる。 実際今回のレースでも、ルクレールはレース中盤のセーフティカー中にタイヤが冷えてしまい、その後グレイニングに悩まされることになったと明かしている。それがグラフでも分かる。
【関連記事】
- ■F1って素晴らしい! ルクレール、ラスベガスでの”F1初レース”を楽しむ「今日はとても楽しかった。2位に終わったのは残念だけどね」
- ■ラスベガスGPに批判的だったフェルスタッペン、白熱バトルの末に勝利し溜飲は下がった?「間違いなく楽しめた」
- ■アルファタウリ、ラスベガスGPではひどいグレイニングに苦しむ。角田裕毅にも入賞を争えるペースは全くなく、厳しい1戦に「今日の挑戦は報われなかった」
- ■F1ラスベガスGP、決勝レース直前にも“ハプニング”。ドライバーズパレードの車両からオイル漏れ……処理されるもスタート直後の多重クラッシュの原因に?
- ■2種類のタイヤ使用義務なんて規則なければいいのに……ピアストリ、3番手走行もピットストップ義務消化で10位が精一杯「こんな良いペースなんて予想外だった」