「振り返ったら被告が走ってきた。走ったままの勢いで女性を刺した」目撃者が法廷で緊迫の証言 ベランダから飛び降りた女性に馬乗りになり襲う… 法廷で男は「覚えていない」繰り返す 堺市女子大学生刺殺事件
「救急車を呼ぼうとして、ポケットから携帯電話を出した際に、振り返ったら被告が走ってきました」 「女性に乗りかかるようにして刺していました」 【画像を見る】裁判官をまっすぐ見つめる山本巧次郎被告 目撃者が法廷で語った緊迫の現場。大学生カップルの “痴情のもつれ” は、路上での惨殺という最悪の結末に至った。 2022年に大阪府堺市で起きた女子大学生殺害事件の裁判。被告の男は “覚えていない” という供述を繰り返した。
「いまは覚えてないのですが、僕のしたことは間違いないです」
2024年1月29日、大阪地裁堺支部で開かれた初公判。入廷した被告は、スーツ姿に青いネクタイを締め、少し長い髪を後ろに結っていた。たたずまいからは “誠実な好青年”という印象を受ける。 山本巧次郎被告(24)は、2022年8月に堺市西区で、大学生の大田夏瑚さん(当時20)を包丁で刺殺した罪に問われている。 罪状認否で山本被告は、「いまは覚えてないのですが、僕のしたことは間違いないです」と述べ、起訴事実を認めたものの、“記憶はない”とした。 弁護人は「急性の精神障害の影響で、被告には当時、殺意も責任能力もなかった」として無罪を主張した。
事件直前に交際解消も…被告が復縁迫ったか
取り調べでの被告の供述や、目撃情報、遺体の状況などから、検察官が考えている事件の構図はこうだ。 山本被告と大田さんは事件の2年前から交際し、同棲もしていた。しかし、大田さんが別の男性と外泊したことが、事件の1週間前に発覚。いったんは被告から別れを切り出し、関係を解消した。 しかし事件当日、山本被告から復縁を求める。携帯電話に残る履歴では、被告が大田さんに「すきすきす」「結婚ぬ」「会いたいよ」「好きだよ」(いずれも原文ママ)などのメッセージを送り、大田さんが「別れてるんやからそんなこと言わないで!」と返信したことが確認されている。 その日の夜に被告は、“置いていたスーツを取りに行く”という理由で、大田さんの自宅(集合住宅4階)を訪れる。 そこで感情が爆発した山本被告は、キッチンにあった包丁で大田さんの両脚を切りつけ、右脇腹を刺した。大田さんは逃れようとして、4階ベランダから飛び降りる。 山本被告は集合住宅の階段を駆け下り、仰向けに倒れていた大田さんに馬乗りになり、包丁で胸を複数回刺した。刺し傷は心臓や肺に達し、大田さんはその場で失血死した。