住宅街にレトロ好き集う青の洋館 千葉市の「旧生浜町役場庁舎」
千葉市中央区浜野町の住宅街に、青色の洋館風の建物がある。県内外のレトロ建築好きが来館するというこの建物は「旧生浜(おいはま)町役場庁舎」。旧生浜町が1932年に建築し、千葉市では数少ない昭和初期の洋風建築物として市の有形文化財に指定されている。市の委託で運営している、NPO法人ちば・生浜歴史調査会の白井孝理事長に、同庁舎の魅力や旧生浜町の歴史を聞いた。【小林多美子】 ――どのような建物ですか。 旧生浜町の前身は生実(おゆみ)浜野村で、北生実、南生実、有吉、浜野、村田の5村が1889年に合併して誕生しました。1925年に生浜村に改称し、28年に町制施行されます。それを記念して建てられたのが同庁舎です。木造2階建てで、1階は町長室や事務室、2階に議場が置かれました。55年に千葉市と合併した後は市の生浜支所となり、92年3月まで生浜地区市民センターとして利用されていました。印象的な青い外壁は、建築当時の色を再現しています。 ――旧生浜町はどんな町だったのでしょうか? 塩田、浜野、村田の3地区は東京湾に面し、遠浅の海でノリの養殖や小魚や貝類の漁が行われ、農業もする半農半漁の村でした。ただ、戦後の経済発展と引き換えにその姿は消えます。京葉工業地帯の造成のため、61年に漁師たちは漁業権を放棄し、海は埋め立てられました。 ――同庁舎は調査会が運営し、一般公開しているんですね。 建物を公開するだけでなく、旧生浜町で使われていた農具や漁具、民具など約40点を常設で展示しています。役場や議場の金庫や机、イスなども置いています。生浜にはかつて生浜郷土史研究会があり、民具などを収集したり、郷土史の本などを出版したりしていました。民具などは浜野町内会が所蔵し、保管されていました。そうした郷土資料をもっと生かし、同庁舎で歴史を伝えるべきだと考えた地元住民で元市職員の今井公子さんらが2007年に調査会を結成しました。館内ではノリ漁を記録した貴重な映像も見られます。 ――調査会はどのような活動をしていますか。 現在会員は20人で、開館時の受け付けや解説と、講座の開催などをしています。また、古文書学習会も開き、地域に伝存してきた「名主文書」「御用留」を解読し書籍化しています。 ――今後、取り組みたいことはありますか? 同庁舎は生浜のシンボルです。より多くの人に利用してもらえるようにしたいです。生浜の風景は埋め立て造成によって一変してしまいました。経済発展のために京葉工業地域の開発は必要だったと思いますが、その引き換えに私たちは何を失ったのか。その背景なども含め、伝えていきたいと思います。 ◇ しらい・たかし 1951年、旧生浜町生まれ。2011年に「ちば・生浜歴史調査会」理事長就任。旧生浜町役場庁舎の公開は火・木・土曜の午前9時~午後4時半。入場無料。