岸田首相、緩和的な金融環境維持は適切-日銀総裁と連携確認
(ブルームバーグ): 岸田文雄首相は19日夕、17年ぶりの利上げを決定した日本銀行の判断について、異次元の金融緩和政策から新たな段階へ踏み出すと同時に、緩和的な金融環境が維持されたことは適切だと述べた。官邸で植田和男総裁と会談後、記者団に語った。
岸田首相は、会談で植田総裁から同日の決定会合での政策変更について説明を受けたとした上で、「引き続き緊密に連携していかなければならない」と語った。植田総裁も記者団に対し、今後も連絡を密にして、協力して機動的な政策運営をしていくと述べた。両氏の会談は昨年12月以来。
日銀は同日の会合で、マイナス金利を解除するとともに、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入の停止も決定。2013年4月以来の大規模な金融緩和政策は転換点を迎えた。
日銀が17年ぶり利上げ決定、世界最後のマイナス金利に幕-YCC廃止
日本は1990年代後半にデフレに陥り、政府は2001年3月の月例経済報告でデフレと認定した。政府と日銀は13年1月に共同声明を発出して以降、デフレからの早期脱却と2%の物価安定目標の実現に向けて連携を強化して取り組んできた。日銀が金融政策の正常化にかじを切り、政府がいつデフレ脱却を宣言するのかに注目が集まる。
デフレ脱却宣言
岸田首相は日本経済の現状について、33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げ、企業の設備投資増などで前向きな動きが見られると指摘した。ただ、デフレ脱却宣言に関しては「消費者物価、GDP(国内総生産)ギャップといった指標、賃金上昇、企業の価格転嫁の動向、物価上昇の広がりなど幅広い角度から総合的に判断する」と述べるにとどめた。日銀との共同声明を現時点で見直す考えはないとも語った。
デフレ脱却宣言のタイミングについて、鈴木俊一財務相は「今回の政策変更があったことで脱却ということにはならない。デフレ脱却かどうかはいろいろな指標を総合的に判断して決めなければならない」と発言。今後の対応に関して「経済、金融市場、為替市場についてよく注視していく必要がある」とも述べた。同日午後、国会内で記者団に語った。