なぜ鹿島は柴崎岳を求めたのか。チームの矢印を明確にできる存在。「満男さんじゃないけど...」強力なリーダーシップに指揮官も期待
J1王者が醸成する空気感
この数年、なかなかタイトルに手が届かない状況で、鹿島のサッカーは古いという言葉が世間で飛び交うようになる。チームの変革を目ざし、なかなか結果が出ないなかで、戦い方のベースを担う監督も、2020年から4シーズンでザーゴ、相馬直樹、レネ・ヴァイラー、岩政大樹と移り変わり、その間に遠藤康や永木亮太、レオ・シルバなど、経験豊富なベテランを含む多くの選手が鹿島を後にした。 チームのサイクルとして、必要な血の入れ替えは当然あるが、年齢や経験値のバランスを考えても、やや急な印象を受ける入れ替わりであったのは確かだ。 そうした状況で鹿島が頼ったのは、鈴木優磨、安西幸輝、植田直通、昌子源といった、国内外の異なる環境を経験してきた“鹿島ファミリー”の選手たち。そのラストピースとも言うべき存在が、柴崎だった。 「彼は昔の(小笠原)満男さんじゃないですけど、いろんなものを引き受けるメンタリティを持っている。ピッチ内にそういう選手がいるのは大きいです。どうすればいいのかというのは言語化して、コーチ陣で落として、毎日の練習で求めますけど。 それを求めたからってできるもんじゃないのが現場の難しさ。それを体現してくれる選手が夏に戻ってきたのは大きいですし、彼に期待しているところはあります」 首位を走っていた神戸との試合で、岩政監督が痛感したのが、ピッチ内での神戸の選手たちの出す覇気や声だった。「サコ(大迫勇也)を中心に出してるんだけど、佐々木とか前川とかも引っ張っていて。あの空気感ですよね。あの空気感を作らないといけない」と岩政監督。 元チームメイトでもある岩政監督が大迫と話した時に「経験値の差です」と直球の指摘をされたという。それは日本代表で共に戦った酒井高徳が、神戸に与えた影響からも感じたという。 スタイルを見れば神戸は大迫を中心に、シンプルに高強度を突き詰めることで、ライバルとの違いを出している。現在の鹿島は「決まりきったものに見えないようなチームを作りたい」という岩政監督の言葉通り、簡単に言えば“後出しジャンケン”で相手の逆を狙うような戦術であるため、完成度が上がらないと、上手く行っている時と行き詰まった時の差が激しく出やすい傾向にあるのは確かだ。