JAL初の777-300ER退役機、白塗りで4号機離日 A350-1000へ世代交代本格化
日本航空（JAL/JL、9201）のボーイング777-300ER型機で初の退役機となった4号機（登録記号N3243P、元JA734J）が9月19日、社員に見送られて羽田空港を出発し、日付が変わった20日午前0時すぎにD滑走路（RWY05）から離陸して日本を離れた。JALでは先月8月まで19年にわたり運航され、売却先のパイロットの操縦によりアンカレッジ経由でニューメキシコ州ロズウェルへ向かっている。鶴丸ロゴなどJAL塗装はすでに落とされた「白塗り」の状態で飛び立った。 【写真】白塗りで羽田を出発する元JAL 777-300ER JA734J ◆2005年から19年運航 JALの777-300ERは、2004年7月1日に就航。ジャンボの愛称で親しまれた747-400の後継機で、シンガポールなど中距離国際線に投入後、ニューヨークやロンドンなど長距離路線の運航を開始した。JALは全13機を2004年から2009年にかけて年に2-3機のペースで受領し、離日した4号機は2005年7月26日に引き渡され、同月28日に日本へ到着し、2005年8月から今年8月20日のラストフライトとなったシドニー発羽田行きJL52便まで、19年間運航した。 退役時の客室仕様「W84」は座席数が4クラス244席で、ファースト8席、ビジネス49席、プレミアムエコノミー40席、エコノミー147席。最終便の運航終了時の飛行時間は8万1823.64時間、フライトサイクルは9223サイクルだった。客室はW84仕様のシートのまま売却されたという。 JALは777のうち、国内線機材として1996年4月に就航した標準型777-200を15機（JAL 8機＋元JAS 7機）、胴体が約10メートル長く1998年8月就航の長胴型777-300を7機導入し、国際線機材として777-200の航続距離延長型777-200ERを11機と、777-300の航続距離を延ばした777-300ERを13機導入し、最盛期には4機種46機の777が稼働していた。 国内線機材2機種が2020年度に全機退役後は、777-200ERと-300ERのみとなり、2002年8月1日に就航した777-200ERは、2023年11月12日の那覇発羽田行きJL916便を最後に全機が退役。777-300ERの退役も始まったことで、JALの777は残り12機となった。 ◆「第2の人生決まってよかった」 19日は777-200ERの退役イベントに携わった777運航乗員部のパイロット、光井淳彦副操縦士や、売却を担当した航空機材・整備調達部航空機グループの荒川舞佳さんらが4号機を見送った。出発時はすでに売却先の機体となっており、JAL側では最後の機体点検などを担当し、売却先のパイロットが操縦して目的地へ向かっている。 最後の整備を担当した羽田航空機整備センター機体点検整備部の井澤裕貴整備士は「寂しい一面と20年間飛んでくれたことへの感謝の気持ちで一杯です。やるからには全力で送り出してあげたいです」と話し、日本出発前最後の点検に向かった。 現在も777-300ERに乗務している光井さんは「エンジン音を聞くと、まだまだ飛べると感じました。JALの籍を離れて海外へ飛び立ちましたが、ずっと一緒に安全運航を支えてきた仲間を見送りました」と話した。 777-300ERは長距離国際線を中心に飛ぶ機体。「13時間、14時間とかけてロンドンやパリから帰ってきて、2-3時間でロサンゼルスとかへ飛び立つシップ繰りを20年近くずっとやってきた機体です。私たちパイロットからするとすごい働き者で、すごくがんばってくれました」（光井さん）と労をねぎらった。 「1機目ということでホッとしました」と感想を話す荒川さんは、「無事に飛び立っていくかが一番心配していたところでした。第2の人生が決まってよかったです」と笑顔を見せた。中古機市場で高い評価を得ているJALの機体だが、整備書類によっては日本語だったりと、外国へ売却時に機体の価値を正しく評価してもらえるよう、荒川さんたちの部署では力を入れているという。 「今回のパイロットの方もそうでしたが、機内を見るとすごくきれいで、よく整備されているとわかっていただけるので、実機を見ていただくことがポイントだと思っています」とJALの777-300ER初の売却手続きを振り返った。 JALは777-300ERの後継機として、今年1月24日に就航したエアバスA350-1000型機を同数の13機導入予定。今年度は8機引き渡される予定で、5号機まで受領しており、2026年ごろには777-300ERからA350-1000への置き換えを終えるとみられる。
Tadayuki YOSHIKAWA
