京都市随一の繁華街で元社長が勝負の一品「生きててよかったとは思えへんけど、楽しんで」
繁華街にありながら落ち着いた雰囲気が漂う京都・裏寺通(京都市中京区)。この場所に店を構えるアパレルショップで、障害者就労支援施設の商品の販売が始まっている。
多くの人の目に触れ、売り上げが増えることで、施設利用者の工賃アップを目指す取り組み。実現したのは「フェアトレード」という視点だ。
作り手に思いを巡らせるという考え方に習って、製作者の一人である男性に話を聞いてみると、味のある商品からは想像もできない日々と、胸に秘めた願いがあった。
■古着活用通じた連携
国内外の観光客や若者が行き交う河原町通の喧噪(けんそう)を背に、蛸薬師通を西へ。寺院が並ぶ裏寺通まで来ると、海外のフェアトレード衣料品・雑貨の輸入販売「シサム工房 京都・裏寺通り店」が見えてくる。
店内には、手仕事で丁寧に仕立てられた各地の服や雑貨と同じように、障害がある人が通う「FSトモニー」(京都市北区)の利用者が手がけた商品が2月から並んでいる。ヘアアクセサリーやフロアマットなど、いずれもシサム工房の古着を材料にしている。
同社は、自社で販売した古着の再活用を検討していた。立場の弱い生産者の生活改善や自立を目指すフェアトレードを、国内でも広げようと障害者施設との連携を模索。古い布を使ったFSトモニーの製品に関心を寄せ、発注を決めた。
シサム工房の水野泰平代表(55)は「商品だけでなく、その背景にいる生産者にも関心をもってもらう機会になれば」と話す。
■利用者への還元期待
FSトモニーの期待は大きい。同施設は、就労や生産活動の機会提供が目的の「就労継続支援B型」。利用者に支払われる工賃は最低賃金保障の対象外で、2022年度の月額平均は約1万5千円。全国の同種施設の平均を2千円下回った。
シサム工房との協業で、新たな消費者層との接点づくりやブランド価値の向上につなげ、工賃の財源となる収入増を目指す。
並んでいる商品の中で、気になったのが、メッセージカード。あしらわれた布のワッペンは、民俗衣装を身にまとう世界中の人がかたどられており、その表情がどれもユニークだ。