「ピッティ」にメンズの新潮流拡大 クラシックを“ほぐす“試み続々【2024-25年秋冬メンズコレまとめ】
その言葉通り、「マリアーノ」の個性でもあったえぐみはこれまでよりも軽減し、洗練された分、女性的なアプローチが浮かび上がった。ニュートラルカラー中心のテーラリングのシルエットは柔らかな弧を描き、センターの合わせをひねったり、ヘムを内側に巻き込ませて膨らみを持たせたりと、細かいテクニックで中性的なニュアンスを加える。ミリタリー調のパファーブルゾンの胸元にはリボンをあしらい、ジップアップパーカは胸から左右にばっくりと割れてオフショルダーのフォームに変化するなど、分かりやすい女性らしさも打ち出しながら、男性服の硬さと女性服の柔らかさを曖昧になじませる。
ハットの老舗「ボルサリーノ(BORSALINO)」や、高級スーツ「キートン(KITON)」との協業で故郷イタリアブランドのクラフツマンシップを賛美しながら、個性的なデザインアプローチでブランドのクリエイションを一歩引き上げた。
安定を手に入れたイギリスの天才
27歳のスティーブン・ストーキー=デイリー(Steven Stokey-Daley)による「エス・エス・デイリー(S.S.DALEY)」も、「マリアーノ」とは別の角度でクラシックをほぐす。ストーキー=デイリーは、燕尾服や軍服といった厳格な服をベースに選び、ノスタルジックな世界観とフェミニンなムードで、ユニホームスタイルの規範を優しく解き放った。
コレクションはE.M.フォスターによる短編小説「パニックの物語(The Story of a Panic)」に着想し、イギリス人仲間がイタリアへの旅を通じて得た自由な感覚をコレクションで表現した。オックスフォード地の燕尾服は下着オンリーの無邪気な“ノーパンツ”スタイル。大胆に肌を露出させたフェミニンなスタイリングを取り入れながら、色使いとディテールの牧歌的なムードによって品を感じさせる。
英国「ローワン(ROWAN)」の糸を使った巨大なブランケットにはインターシャで花を描き、ワックスジャケットは鮮やかなビビッドカラーを採用するなど、イギリスの代表的な衣服を再解釈し、伝統を前進させた。ブランド初のシューズも、モダン・ブリティッシュスタイルにアクセントを加えた。