コロナ禍前に戻った…クルーズ船の寄港、24年は過去最多に迫る151回 客層はアジアの団体から欧米の個人が主流に
2024年の鹿児島県へのクルーズ船寄港回数は、今月26日の2隻を含め過去最高156回(19年)に迫る151回を予定する。新型コロナウイルス禍前に戻りつつある中、ツアーでの買い物目的のアジア人から個人観光を好む欧米が増えるなど客層は変化した。県はクルーズ船寄港増加による経済効果に期待を寄せるが、一大拠点のマリンポートかごしまの2次交通不足は解消されないままだ。 【写真】タクシー待ちの間に到着後のルートを確認できるよう設置したパネル=鹿児島市のマリンポートかごしま
県港湾空港課によると、マリンポートへの寄港は今年96回(26日含む)。宮之浦港19や名瀬港11をはじめ、初寄港の下甑島など離島も計46回あった。 小さな港に入れる5万トン以下の小型船の割合は、コロナ前より16.6ポイント増の27.6%。文化や自然といった体験型観光を重視する欧米客のニーズともマッチしており今後も増える見通しだ。NPO法人ゆめみなと鹿児島の増森千絵子さんは「免税店を巡るバスツアーは減った」と変化を感じる。 ■□■ 「ツアー客の方が対応はやりやすかった」とマリンポートの受け入れ関係者は明かす。自由に観光する乗客が多い分、タクシー需要が高まるからだ。市タクシー協会とも密に連携はするものの、タクシー業界では運転手不足が続き需要に応えきれていない。乗り場には毎回長い列ができ、90分待ちという日もある。 鹿児島海外観光客受入協議会の田中瑞穂さん(66)は「マリンポートは海の玄関口」と力を込める。ただタクシー不足に加え、マリンポート周辺は渋滞も大きな課題で、玄関口の混雑は悪印象を抱かせかねない。
渋滞解消が期待される鹿児島港臨港道路は昨秋、完成時期が30年度へ延期となった。田中さんらは、待ち時間に行き先を聞き取り運転手に渡すカードを配布、7月には観光地区へスムーズにたどり着けるよう英語表記のパネルを設けるなど工夫するが、ソフト面だけでは「難しい」とこぼす。 ■□■ マリンポートでは今後、新旅客船ターミナルの本格的な整備が始まる予定で、さらなる寄港数増加が見込まれる。県港湾空港課の佐多悦成課長(56)は「マリンポートにあるような浮桟橋が本港区や桜島にもある。海上交通の活用などで対応できないか」と新たな2次交通手段を模索する。 県PR観光課によると、昨年の鹿児島港へのクルーズ船による総合的な経済効果は約33億5000万円。飲食や交通費、土産品など関連産業に波及する。観光県・鹿児島にとっての恩恵は大きい。同課の大薗昌吾観光クルーズ船担当参事(53)は「鹿児島には魅力的な離島も多い」として、県全域での受け入れ態勢拡大・充実を図る考えを示した。
年内の県内寄港は残り2回。26日にミツイ・オーシャン・フジ(3万2477トン)とイースタン・ビーナス(2万6594トン)が、本港区北ふ頭とマリンポートにそれぞれ初寄港する。
南日本新聞 | 鹿児島