「103万円の壁」決着越年 命脈保った「自公国連合」 2月下旬にも火種再燃〔深層探訪〕
少数与党となった石破政権を揺さぶった「年収103万円の壁」見直し問題は、決着が来年に持ち越された。与党は政権運営のカギを握る国民民主党との「部分連合」の命脈を何とか保った形だが、2~3月に予想される2025年度予算案の衆院採決に向け、国民民主との駆け引きが再び激化しそうだ。 【ひと目でわかる】総合経済対策の概要~物価高に対応、「103万円」見直しも~ ◇決裂から一転 「誰からとなく気持ちは合い、集まった」。自民、公明、国民民主3党の幹事長は20日、国会内で会談し、「103万円の壁」を巡る協議の継続で合意。自民の森山裕幹事長は国民民主による3日前の協議打ち切り宣言などなかったかのように、3党の「以心伝心」ぶりをアピールした。 衆院選での自公過半数割れを受け、臨時国会を前に自民が近づいたのは、石破茂首相が「憲法観も近い」と見る国民民主だった。同党の榛葉賀津也幹事長と接点がなかった森山氏は携帯電話の番号を周辺から入手。国民民主の看板政策「103万円の壁」見直しを総合経済対策に明記し、24年度補正予算成立への協力を取り付けた。 ただ、「103万円」をどこまで引き上げるかを巡る税制調査会長間の協議は難航した。国民民主が主張する「178万円」まで上げれば7兆~8兆円の税収減が見込まれることから、自民税調が抵抗。3党幹事長が11日に「178万円を目指し来年から引き上げる」との合意を結んでからも「釈然としない」(宮沢洋一会長)と不満を隠さなかった。 自民税調は「123万円」を13日の3党協議で提示した後、譲歩する姿勢を見せなかった。このため、国民民主は17日の協議を途中退席し、打ち切りを通告。3党は決裂したかに見えた。 ◇「もたれ合い」 とはいえ、政府内からは「すぐに元のさやに収まる」と達観する声が漏れていた。森山、榛葉両氏は会食などを通じて断続的に意見交換を続けており、野党内では「打ち切りは自民税調をけん制するための芝居」との見方もささやかれた。 実際、自民に3党協議を決裂させる余裕はない。自民は国民民主へのアプローチと並行し、日本維新の会とも教育無償化に関する協議を開始。国民民主に加えて維新との部分連合を手元のカードに加えたい思惑があるが、維新内には「野党分断だ」(幹部)と警戒感も広がっており、25年度予算への賛成を取り付けるシナリオは見えない。 国民民主にとっても3党協議は生命線だ。国民民主の支持率は最近、一部の世論調査で立憲民主党を抜いたが、背景には3党協議を通じた政策実現への期待があるとの見方は強い。榛葉氏は20日、「178万に近づく形にしたい」と語り、自民への歩み寄りの余地をにじませた。 「自民と国民民主はもたれ合いの関係だ」。政府関係者の一人はこう指摘した。 もっとも、政権運営の火種はくすぶり続ける。財務相を務めた自民の鈴木俊一総務会長は20日の記者会見で「税収の上振れなどに期待し、安定財源とすることはできない」と財源論を重視しない国民民主を批判。党内には国民民主への不満が募っており、「折れるのを待っていればいい」(自民幹部)との声も上がる。 国民民主に対しても支援団体の連合から路線転換を求める声が漏れる。「次は25年度予算案の衆院採決が迫る来年2月下旬から3月上旬がヤマ場になる」。政権幹部はこう語った。 ◇自公国3党の税制協議を巡る動き 【2024年】 10月 1日 石破内閣が発足 27日 衆院選、与党過半数割れ 11月11日 自民、国民民主が党首会談 12日 自民、公明、国民民主3党が政策協議開始、国民民主が「年収103万円の壁」見直しを要求 20日 3党が25年度税制改正に向けて協議入り、国民民主が控除額178万円への引き上げを要求 3党が総合経済対策に合意 22日 総合経済対策を決定 28日 臨時国会召集 12月11日 3党幹事長が「178万円目指し来年から引き上げ」で合意 13日 3党協議で自公が 123万円への引き上げ提案 17日 24年度補正予算成立 3党協議打ち切り 20日 3党幹事長が協議継続で合意 123万円引き上げを盛り込んだ25年度与党税制改正大綱を決定 年末 25年度予算案、政府税制改正大綱を決定 【25年】 1月24日? 通常国会召集 3月 25年度予算、税制改正関連法が成立? 7月20日? 参院選