「スポーツ紙」2000年から3割に減った スマホで読めるし缶コーヒーより高い...誰が買うの?
職場に向かう朝の電車の中では、スポーツ新聞で前夜のプロ野球ナイターの裏話を読み、帰りは夕刊紙の政治批判で留飲を下げたり、お色気小説でニヤニヤ......というのが、平成半ばころまでのサラリーマンの通勤風景だった。 【画像】新聞1部は結構高い!? そんな即売紙(主に駅売店やコンビニで販売される新聞)が存続のピンチに追い込まれ、2025年1月末で夕刊フジは廃刊、東京中日スポーツは紙の新聞をなくして電子版だけになる。いずれも部数減と用紙代・印刷代などの制作費や配送費の高騰で、発行・販売を続けることが難しくなったためと説明している。 ■631万部→192万部 どのくらい減っているのか。日本新聞協会によると、2000年は約631万部あったスポーツ紙は、23年には約192万部とほぼ3割に激減、夕刊紙もそれに近い減り方と見られる。 部数減のいちばんの理由は、みんながスマートフォンを持つようになったことだ。スポーツ紙や夕刊紙はさまざまな情報を得るだけでなく、電車の中での"退屈しのぎ"という役割も大きい。しかし、スマホがあれば速報ニュースもびっくり仰天の芸能スキャンダルも流れてくる。テレビも見られるし、ゲームもできる。SNSで友だちとメールでおしゃべりしてもいいから、電車の中で退屈することがない。新聞や週刊誌はすっかりお株を奪われてしまったのだ。 有料で割高というのも、"離れ"を広げた。かつては、即売紙のライバルは競合他紙ではなく、缶コーヒーといわれていた。値段は同じくらいで、駅のホームでどっちを買おうか迷ったサラリーマンが、缶コーヒーを買ってしまったら、新聞の方はパスされる。そのライバルの缶(ボトル)コーヒーはいま1本100~140円だが、スポーツ新聞は1部160円、夕刊紙は180円である。価格競争でも負けてしまっている。
生き残れる紙媒体とは?
そんな苦境に新型コロナが追い打ちをかけた。リモートワークで購読者の通勤客がめっきり減り、休業する駅売店も出た。これでは、駅売り・コンビニ売りの新聞は厳しい。さらに、円安で用紙や印刷インキも値上がり。体力を一気に奪われて、ついに2紙が廃刊・縮小ということである。 では、このままスポーツ新聞や夕刊紙は消えていくのだろうか。夕刊紙の経営幹部は「紙媒体としては先細りもいいところですよ。でも、ニュースや実用情報、企画もの、ライトノベルなどの記事提供媒体としては生き残れる。スポーツ新聞では2紙、夕刊紙はうちの1紙ですかね」とニヤリとした。さて、次はどこだろう。 (シニアエディター 関口一喜)