東京五輪採用の新公式球も影響か。バレーW杯で2勝3敗と苦戦の全日本女子の何が悪い?
女子バレーのワールドカップの後半戦が22日から北海道・札幌(北海道立総合体育センター 北海きたえーる)で強豪のアメリカ戦から再スタートするが、ここまで日本は2勝3敗と苦しんでいる。ドミニカ、カメルーンからは白星をマークしたが、ロシアに競り負け、ライバルの韓国にも1-3と敗れ、リオ五輪金メダルで世界ランキング2位の中国にはまったく歯が立たなかった。苦戦の原因分析と後半戦への立て直し策について、元日本代表の大山加奈さんに聞いた。 ――苦しい展開が続いています。いくつか原因があると思いますが、何が一番大きいですか? 「一番は被ブロックの本数が多すぎることですね。韓国戦では17本、ロシア戦で17本、中国戦で18本、対して日本は3から5本です。日本のブロックの本数はこれくらい出ればいいほうだと思いますが」 ――なぜ被ブロックを多くやられているのでしょうか? 「攻撃バリエーションの少なさです。ブロックの的が絞りやすい。セッターに余裕がなくレフト攻撃頼りのパターンから抜け出せません。例えばカメルーン戦では、長内美和子選手がセッター対角のオポジットのポジションに入って、彼女がバックアタックを求め、スパイカーの4人で一斉に攻撃を仕掛ける形が何回か作れていました。結局、長内選手のバックアタックは1本でレフト攻撃が多かったのですが、この試合のような4人が仕掛ける状況をたくさん作っていかねば、被ブロックの本数を下げることができません」 ――攻撃バリエーションの少なさは、ずっと大山さんが指摘しています。これはセッターの問題ですか? それとも? 「ミドルが使えないことをセッターの佐藤美弥選手一人の責任にするのは可哀そうです。これはチーム全体の問題です。ファーストタッチが低くて、セッターに余裕がないため、うまくトスを上げることができていません。スパイカーも開けません。特にミドルはブロックに跳んで、すぐに開いて、といった動きをしなければならないので余裕がないと攻撃に参加ができないんです。チームは低くて早いボールをセッターへ返し、相手の守備が完成する前に攻めようとするバレーを目指していました。でも、それが思うように機能していないのが現状です。セッターも、Aパスからは多彩な攻撃を仕掛けることができていますが、Bパスになると攻撃のバリエーションが減ってしまいます。ミドルを含めた4人攻撃を可能にするには、まず、このファーストタッチの部分の見直しを考えることが必要なのかもしれません」 ――セッター以外はほぼ同じメンバーの韓国にアジア大会ではBチームが勝ちました。なのに今回は、Aチームが敗れました。この差はなんなのでしょう。 「アンダーカテゴリーは結果を出しています。今年7月のU―20の世界選手権で優勝しています。メンバーは下北沢成徳高校、金蘭会高校の選手が中心となっています。この2つの高校は、ファーストタッチをゆっくりと返し、速さにこだわらず、スパイカーの能力を活かすことを徹底しています。おそらく、そのバレーを踏襲しているのか、ファーストタッチに余裕があり、ミドル、ライト攻撃をたくさん使い、みんなで仕掛けるという意識の高いバレーをしています。シンプルなバレーですね」 ――韓国はそういうバレーに見えました。 「韓国は、逆にファーストタッチが高くて余裕のあるバレーをしていました。かつて日本でもプレーしたスーパーエース、キム・ヨンギョン任せでなく、韓国Vリーグの昨季MVPのレフトのイ・ジェヨンが得点を重ねました。彼女の身長は178センチです。韓国史上初の外国人監督としてイタリア人のリバリニ監督を招き、リバリニ監督が最も韓国に適したバレーを選択したのでしょうが、そのバレーに日本が巻き返すヒントが隠れているようにも思えました」