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色づいたブナ林を進み、粟畑を目指す登山隊＝16日午前8時5分

御所山山頂までの急登は登山道の木々をつかみながら進んだ＝19日午後１時20分

倒木に生えていたナラタケ。きのこ汁にして味わった＝16日午前７時54分

（写真：山形新聞社）

　「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった」 　川端康成の小説「雪国」冒頭である。景観が変貌する様子を文豪は活写する。 　御所山踏破2日目となる16日、山形新聞の登山隊は東根市の柳沢小屋から、宮城県との県境を縫って主峰の御所山（1500メートル）に向かった。登山道の周囲はしばらく一面のブナ林。そこにカエデ、ナナカマド、オオカメノキなどが交じって紅葉を競う。 　赤、黄、褐色と上から下までさまざまに変容した樹林では、全体の空気までが暖色系に色づいたように思える。季節は異なれど、川端の名文が頭をよぎった。 　道中、記者2人をこの日案内してくれた東根山岳会のキノコ名人、高橋一郎さん（73）が「この辺りにはよく生えるよ」と教えてくれた。すると実際、登山道脇の倒木にナラタケがびっしり。もう一人のガイド役、奥山力雄さん（73）も一緒になって、しばしキノコ採りに没頭した。 　山の天気はすぐ変わる。初めのうちは木々の間から御所山を遠望できた。しかし高度を稼ぐにつれて雲に包まれ、雨脚が強まる。最後の急坂を登り切って山頂にたどり着いた時は体も冷えていた。それだけに、山頂避難小屋で高橋さんが作ってくれた即席きのこ汁に身も心も温まった。