“エスプリアルピーヌ”グレードが追加されたルノー・アルカナ。E-TECHハイブリッドは相変わらず良い
クーペスタイルのSUV、ルノー・アルカナがマイナーチェンジして登場した。日本導入は2022年5月のことだったので、およそ2年半ぶりに衣装替えをしたことになる。独自の機構を持つE-TECHフルハイブリッドと、マイルドハイブリッドの2種類のパワートレーン設定に変わりはない。アルピーヌ(Alpine)ブランドのエッセンスを受け継ぐ「エスプリアルピーヌ」グレードに試乗した。 TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota) エスプリアルピーヌ登場! マイナーチェンジ版はすべて、“スポーツシック”を旨とする「エスプリアルピーヌ」グレードとなる。アルピーヌ(Alpine)ブランドのエッセンスを受け継ぐスポーツラインの位置付けで、従来はR.S.ラインが受け持っていたグレードの置き換わりだ。ただし、イメージはだいぶ違う。R.S.ラインは硬派なスポーツグレードのイメージだったが、エスプリアルピーヌはスポーティさと上質さを合わせ持ったイメージだ。本国ではすでに導入されているが、日本ではアルカナが初導入となる。 ブラックの塗装面と切削面を組み合わせたホイールはエスプリアルピーヌ専用だ。サイズも変わっており、従来の18インチ(215/55R18)から19インチ(225/45R19)にサイズアップされている。インテリアではシートバックにアルピーヌのロゴが入る。そのシートはマイナーチェンジを機にレザーフリーとなり、サイドサポート部は人工皮革のTEPレザー、座面と背もたれの部分はスエード調だ。ブルーのステッチがアクセントとなっている。 シートベルトもブルーのステッチ入り。TEPレザーを巻いたステアリングホイールとスエード調素材を配したドアトリムにはトリコロールのステッチが施されている。シートのショルダー部には三色旗のタグ。フランスらしさの表現が満載だが、しつこさは感じず、粋である。キッキングプレートにはアルピーヌのロゴが入り、乗り降りする際に目に入る仕掛けだ。 マイナーチェンジにともなう変化点にフロントグリルがある。中央部に鎮座するルノーのエンブレムは従来の三次元形状から、新世代のフラットな形状に変わった。この新世代エンブレムが装着されるのも国内仕様ではアルカナが初だ。平面的になったエンブレムとは対照的に、ひし形を反復したパターンを持つグリルは立体的な造形となっている。フロントフェンダーにはエスプリアルピーヌのバッジが配されている。 ムードや質感にまつわる変更だけでなく、機能面でも進化がある。センターのタッチスクリーンは従来の7インチから縦型の9.3インチに変わった。その大きくなったスクリーンには、リヤビューが表示されるモードで左前方の映像が同じ画面に映るサイドビュー機能が追加されている。 気持ち良く走って燃費がいいのがE-TECHハイブリッド E-TECHフルハイブリッドと呼ぶシステムに変更はない。1.6L直列4気筒自然吸気エンジン(最高出力69kW、最大トルク205Nm)に電子制御マルチモードATを組み合わせたシステムだ。ATというと遊星歯車を組み合わせて構成する自動変速機を連想しがちだが、ルノーのシステムはMTの変速機構をベースに構成していると理解するのが実態に近い。エンジン側に4段、最高出力36kW、最大トルク205Nmを発生するメインモーター側に2段の変速ギヤを持ち、ギヤの掛け替えはレース専用車両のトランスミッションでおなじみのドッグクラッチで行なう。変速ロス低減のためだ。 電子制御マルチモードATはもうひとつ、HSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)と呼ぶ最高出力15kW、最大トルク50Nmを発生するサブのモーターを持っており、変速時の回転同期や発電に用いる。 発進は常にメインモーターで行なう。最新の電動車にしてはSFチックな車両接近通報音が目立ち気味だが、総じて静かで、電動車ならではのスムースな走りが楽しめる。アクセルペダルの動きから、システムがドライバーの要求トルクを演算。メインモーターが発生できるトルクを上回る場合はエンジンを始動させ、トランスミッションで動力を混合させてタイヤに伝える。バッテリー残量とアクセルペダルの踏み方次第だが、緩く加速する状況では高速域までEV走行でカバーする。 アルカナ・エスプリアルピーヌE-TECHフルハイブリッドの車両重量は1470kgだ。この車重に対して1.6L自然吸気エンジンでは俊敏な走りは期待できそうにないと予想して当然だ。ところが意に反して(?)、フルハイブリッドのアルカナは良く走る。サッと追い越しを済ませたいとか、巡航スピードまで素早く到達させたいと感じたときに、まるでドライバーの意を汲み取ったかのように頼もしい力を出してくれるのである。 メインモーターの出力は36kWしかないが、使い方が絶妙なのだろう。モーターならではの応答性の高さを生かし、即座にアシストすることでドライバーを満足させるだけでなく、気分を高揚させる。アルカナに乗っていると、「あ、いまの気持ち良かったな」と感じる瞬間が度々訪れる。ドライバーの操作に対するクルマの反応にラグをほとんど感じないのが、気持ち良さにつながっているのだろう。 アクセルペダルを深く踏み込んで強めの加速を長く持続させるシーンでは、エンジンが始動し、車速の上昇にともなって変速する。このときのエンジン音もまた、ドライバーの気分を高揚させる要素だ。エンジン音が邪魔になっていない。機能面では、マイナーチェンジでE-SAVEモードが追加になったのが変化点。1.2kWhの容量を持つバッテリーの残量を高めに保つモードで、センターのタッチスクリーンでオンオフを切り換える。 気持ち良く走って燃費がいいのが、フルハイブリッドシステムを積むアルカナの特徴でもある。WLTCモード燃費は22.8km/L。走り方にもよるが、車載燃費計が20 km/Lを超える数値を表示するのは日常的といえる。ルノーのクルマについてはこれまでも走りの面で定評はあったが、これに燃費の魅力が加わったのがアルカナ。マイナーチェンジでスポーツテイストに磨きがかかり、より上質になった印象だ。 ルノー・アルカナ エスプリ アルピーヌ E-TECH フルハイブリッド 全長×全幅×全高:4570mm×1820mm×1580mm ホイールベース:2720mm 車重:1470kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:H4M型 排気量:1597cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6 mm 圧縮比:10.8 最高出力:94ps(69kW)/5600pm 最大トルク:148Nm/3600rpm 燃料供給:PFI 燃料:プレミアム 燃料タンク:50L メインモーター:5DH型交流同期モーター 最高出力:49ps(36kW)/1677-6000rpm 最大トルク:205Nm/200-1677rpm サブモーター:3DA型交流同期モーター 最高出力:20ps(15kW)/2865-10000rpm 最大トルク:50Nm/200-2865rpm 燃費:WLTCモード 22.8km/L 市街地モード19.6km/L 郊外モード:24.1km/L 高速道路:23.5km/L トランスミッション:電子制御ドッグクラッチマルチモードAT 車両本体価格:499万円
世良耕太