【映画ライターの年末映画案内】『屋根裏のラジャー』は大人と子どもで見え方が変わる|Mart
【見どころ②】日本初の技法を取り入れた新たな手描きアニメーション
スタジオポノックは、手描きのアニメーションにこだわるスタジオ。そして今作では光と影の表現方法に着目し、新たなデジタル技術を用いたフランスのクリエイターたちとコラボ。日本初となる手法で、手描きアニメをさらに進化させています。 制作期間にコロナ禍を経たこと、この新たな試みが加わったことで、映画の公開は1年以上延期に。そのためスタジオポノックは倒産の危機に陥ったことを、プロデューサーの西村義明氏は取材で明かしています。 そこまでしてこだわった映像は、特にイマジナリの世界で存分に発揮されています。冒頭のラジャーの登場シーンは本当に美しく、新しいアニメーションの広がりを感じました。
【見どころ③】本を代表する俳優陣が声のキャストとして集結
声のキャストの豪華さも、公開前から話題に。主人公のラジャーの声を演じた寺田心さんは、アニメーション映画初参加。ラジャーを生み出した少女アマンダ役に、ポカリのCMでもおなじみの鈴木梨央さん。お二人とも子役からずっと活躍されています。 アマンダの母リジーは安藤サクラさん、イマジナリの町でラジャーが出会う少女・エミリ は仲里依紗さんと人気女優が声の競演。ラジャーの前に現れる怪しげな猫・ジンサンは、“4度目の猫の声”を演じる山田孝之さん。 個人的に印象に残ったのは、ラジャーをしつこく(本当にしつこい!)つけ狙う謎の男ミスター・バンティングの声を演じたイッセー尾形さん。怪しさ満点の声ですが、一言ひとことに重みがあります。 美しい映像や声の演技を純粋に楽しむのも良し、冒険ファンタジーにワクワクするのも良し、奥深いメッセージを読み取ろうとするのも良し。色んな楽しみ方ができるアニメーション映画、冬休みに親子でぜひ。 作品情報 『屋根裏のラジャー』 全国東宝系にて公開中 原作:A.F.ハロルド「The Imaginary」(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊) 監督:百瀬義行 プロデューサー:西村義明 制作:スタジオポノック 声の出演:寺田 心 鈴木梨央 安藤サクラ 仲 里依紗 杉咲 花 山田孝之 高畑淳子 寺尾 聰 イッセー尾形 © 2023 Ponoc 取材・文/富田夏子