町田・髙橋裕大

ペスカドーラ町田の髙橋裕大は、23歳という若さでありながら今シーズン限りでの現役引退を表明した。 「新しい道に進む事を決断しました。（中略）ただこの道、ワクワクが止まりません」。引退リリースでそう発信していた髙橋は、今後なにを始めるのか。 今シーズンはパワープレーディフェンスで驚異の運動量を発揮し、特に存在感を放つなど高いパフォーマンスを見せてクラブの優勝争いにも大きく貢献しているが、なぜ“引退”という大きな決断を下したのか。 1月6日、名古屋金城ふ頭アリーナにて行われたFリーグ2023-2024ディビジョン1 ファイナルシーズン上位リーグ第25節・立川アスレティックFC戦の後のミックスゾーンで、髙橋に話を聞いた。

マインドが変わった転機は大学で受けた授業

転機は大学で受講したアントレプレナーシップ教育

──第25節の立川アスレティックFC戦では持ち味のパワープレーディフェンスからボールを奪い、ゴールを決めるなど活躍する機会は多いですが、引退を発表してからの心境はいかがですか？ そんなにネガティブな感じは全然なくて、やめるからには最高の状態で終えたいという気持ちで、うまくフットサルに身が入っています。 ──引退を決めた年にリーグ優勝を自力で手繰り寄せられるチャンスがあります。 タイミングはよかったと感じはしていますけど、僕がめちゃくちゃ活躍しているわけではなくて、戦える選手が多いので名古屋オーシャンズにも負けないチームになっていけました。シーズンの初めから「優勝は全然狙えるな」と思っていましたし、引退の時期がそれにたまたま重なっただけという感じです。 ──引退発表の文面を見ているとポジティブな決断をされた印象でしたが、新しい道に進むことにした理由を教えてください。 フットサルが悪いとか、そういうのは全くなく、「もっとうまくなれる」とは自分でも思います。アスリートをやりながら仕事している時に、新しい道が自分のなかで見えて、そっちのほうがすごく楽しそうだなと思えました。自分は「やりたいことをとにかくやる」というスタンスで生きていて、フットサルよりも違う道のほうに進んでみたいと思ったので、このタイミングで次の道に進む決断をしました。だから全然ネガティブではなく、ポジティブな気持ちでいます。 ──今後はどんなことをやっていくのでしょうか？ 詳しいことは後々話したいと思っているんですが、自分で事業を回して、自分のポジティブな思いをみんなに届けていきたいです。フットサルを辞めるからには、それを貪欲に突き詰めていきたいと思っています。Fリーグ選抜の時には考えてもいなかったことが今はやろうとしている感じです。 ──そうした考えになったのは、いつ頃ですか？ きっかけは大学の授業でした。Fリーグ選抜の活動から戻ってきた次の年に「アントレプレナーシップ教育」っていう名前の起業家の精神を育んでいくような内容の授業を受けて、（2年前に）アパレルの事業を始めてみたのはそれでした。自分の思いを乗せたものが買っていただいた人の手に届いて、いい思いをしてくれるというのがすごくおもしろくて、徐々に自分で事業を回していく道もいいなという考えになりました。教えてくれた先生は韓国人の、ちょっとピリついた人なんですけど、すごく熱く語っていて（笑）。 ──その授業を受けてからアパレルブランドを立ち上げたり、思考が変わっていったんですね。 そうですね。「俺が本当にやりたいことってなんだろうな」ということを考え始めて、今に至るという感じです。フットサルはすごく楽しいですし、仲間や監督にも恵まれていて、F1でもプレーできていますし日本代表も目指せる環境にはありますけど、それよりも新しい道のほうが「やってみたい」と思えて。 ──一般の社会に出ても、アスリートのマインドは大きなアドバンテージになるんじゃないかと、個人的には思います。 アスリートだったことは強みになると思います。特にフットサル選手はチームでのコミュニケーションが必要ですし、ミスが起きた時もどう改善して、どう次につなげるか考える習慣があります。プロの世界でそれをやってこれたの経験は大きいですね。 ──Fリーグ選抜の同期だった平井雅大選手が仕事とフットサルが相互に生きることを話していた印象があります。 らいーは優秀なので、いろいろ聞こうかなと思っています（笑）。 ──今はリーグ優勝に向けて集中されている時期だと思いますが、大きな決断をしたからには覚悟を持って取り組んでいかないといけないですね。 そうですね。みんなで優勝して、まずは最高のかたちでシーズンを終えたいですし、引退してもフットサルは見に行くつもりなので、またみなさんともどこかで会えたらと思います。