顧客の“利用サイクル”把握 盗んだ金塊を複数の質店で現金に…貸金庫窃盗 巧妙な手口
貸金庫から顧客の金塊や現金を盗んだとして、三菱UFJ銀行の元行員・今村由香理容疑者(46)が逮捕された事件。4年半にわたる犯行が、なぜ明るみに出なかったのか、その巧妙な手口が見えてきました。 【画像】顧客の“利用サイクル”把握 盗んだ金塊を複数の質店で現金に…貸金庫窃盗 巧妙な手口 今村容疑者は、30歳ころから競馬にのめりこみ、やがて、FX投資に手を出すようになったといいます。 2013年ごろには約700万円の借金を抱え、民事再生法の適用を申請し、認可されています。裁判所を介して、業者と交渉し、借金を減額する手続きです。原則3年以内に完済する必要があります。ところが。 今村由香理容疑者 「一度はやめたが、また始めてしまった」 捜査関係者によりますと、約1年後には、投資などを再開し、結果、10億円以上の損失を抱えていたとみられます。 そうした多額の損失を埋めるため、貸金庫から金品を盗むようになったと今村容疑者は話しているそうです。 今村容疑者の知人 「いろいろなお金の運用のことは知ってるから、何か投資をしたのかなって思っていた。競馬をやっているとは知らなかった。とにかくびっくりしている。私から見たら、穏やかで優しい感じの仲良くやっていきたい、感じのいい方だなという印象」 そもそも金融商品取引法で、銀行員は、投機的利益の追求を目的としたFX投資が禁じられています。当然、三菱UFJ銀行でもです。 三菱UFJ銀行 「本件は、個人の私生活のなかでの取引を複数の他行の口座で行っていたこともあり、検知することができませんでした」 今回の逮捕容疑は、貸金庫の利用者2人から合わせて約20キロの金塊、2億6000万円相当を盗んだとされるもの。ただ、警視庁は、被害規模を現金で10億円以上、金塊は時価総額で7億円以上になるとみています。それも4年半にわたって、60人以上から。 なぜ銀行側は、見抜けなかったのか。
まずは、犯行に使われたとみられる貸金庫の鍵について。 利用者用のスペアキーは、契約の際、その場で専用の封筒に入れられ、利用者側と銀行側、双方が印鑑を押して、封印する仕組みです。今村容疑者は、このスペアキーで金品を盗んだあと、封筒に戻し、再度、糊付けしていたことが明らかになりました。 そして、ターゲットの見定めについては。 今村由香理容疑者(逮捕前 任意の調べ) 「顧客が利用する頻度やサイクルを把握して、盗む対象を決めていた」 でも、突然、貸金庫の利用者がやって来ることもあったようです。 三菱UFJ銀行の関係者 「想定外のタイミングで来店した際には、部屋に入るためのシステムを意図的に切断し、『故障している』などと言って、中に入れないようにしていたようです」
盗んだとされる金塊は、東京や千葉県の質店7カ所に持ち込んで、1億7000万円の現金を得ていたことも警視庁の捜査で判明しました。ただ、インゴットの表面には、シリアルアンバーが刻印されています。その番号から発覚するのを恐れ、いったん得た現金で、金塊を質受けして貸金庫に戻すなど、自転車操業を続けていたようです。 さらに、今村容疑者のスマホからは、貸金庫に入っていたものを撮影した写真が多数、見つかりました。 三菱UFJ銀行によりますと、現時点で補償が済んでいるのは約40人の被害、7億円あまりだということです。
テレビ朝日