【ライブレポート】imase初の全国ツアー「imase Tour 2024 “Shiki”」東京・Zepp DiverCity公演
3月からスタートしたimase初の全国ツアー「imase Tour 2024 “Shiki”」が4月6日、東京・Zepp DiverCity公演でセミファイナルを迎えた。昨年秋の東名阪ツアー「imase 1st Live Tour 2023 “Utopia”」に続き、規模を拡大した今回のツアーも全公演チケットは即完。5月には待望の1stアルバム『凡才』のリリースを控え、春夏のフェス出演や新たな国内外でのツアーも発表されるなど、次なる大きな舞台へと軽やかに跳躍していくimaseの勢いが形となったライブをレポート。 【全ての写真】imase初の全国ツアー東京公演(全19枚) 会場であるZepp DiverCityに入ってまず驚いたのは、その熱気。観客はimaseと同世代の20代が中心で、グッズを身につけ、友人同士楽しそうに語らいながら開演の時を待つ心地よいざわめきがフロアに満ちている。この日のMCで、「ライブ自体が初めてだという人は?」というimaseの問いに結構な人数の手が挙がり、「初めてのライブに僕を選んでくれてありがとう」という印象的なシーンがあったが、まさに楽しみにしていた日を迎えた高揚感が会場内の温度を上げているようだ。 暗転と共にフロアを優しく包んだのは、雨音。バンドによるリリカルなセッションがスタートし、ステージにかかった紗幕の中央に当てられたスポットライトにimaseのシルエットが浮かび歌ったのは「Pale Rain」だ。迷いや葛藤を抱えながらも進んでいこうとする気持ちを淡いペールトーンのボーカルで繊細に表現し、語りかけるように紡がれた曲に会場には歓声と拍手とが起こる。 ほのかにあたたかな余韻が会場にわたるなか、雨音のSEは鳥のさえずりや波音に変わり、あらわになったステージで笑顔を見せたimaseは、「imase Live Tour 2024 “Shiki”へようこそ。東京、セミファイナル楽しんでいきましょう」と言って、続く「Nagisa」や「ユートピア」で観客のジャンプを巻きこしていく。グルーヴィに、また洒脱で多幸感あふれるサウンドを奏でるのは、松本ジュン(Key)、モリシー(Awesome City Club/Gt)、林あぐり(Ba)、BOBO(Ds)で、2022年末の初ライブ(オンライン)からimaseのステージを共に作り上げてきたメンバーだ。 エレクトロなダンスチューン「Shine Out」はバンドアレンジでより肉感的となって、ドラムのキックが観客の足元からビリビリと伝わってくるなか、imaseはステージでステップを踏みながらファルセットを響かせる。お立ち台に腰掛けて語りかけるように歌った「でもね、たまには」では、ジェントルなファルセットとラップを聴かせた。シンガロングやジャンプを起こすライブならではの曲からリラックスしたベッドルームポップスまで、その歌声で空間を軽やかに色づけていく感覚だ。 “Shiki”と題した今回のツアーでは、ステージで移りゆく季節を表現した。しっとりと降る雨の季節を経て、ステージのスクリーンには来るアルバム『凡才』のモチーフにもなっている盆栽が映し出され、バンドによるインタールード的セッションから「Nagisa」で爽快な夏へ、そして色づいた盆栽とアコースティックなセッションから、季節は秋へと突入する。 imaseの衣装もシャツ姿から、上着を羽織った秋の装いだ。秋のはじまりは、「逃避行」。キーボードとボーカルにピンスポットが当たって、歌と伴奏のミニマムな音響ではじまった歌は、徐々に楽器が加わって温かみを増していく。「I say bye」「アナログライフ」と、この秋のタームでは歌心のある曲が並んだ。日常に溶け込むBPMや心地よいビートに乗せたimaseのメロディは、いつの間にか口ずさんでいるキャッチーさを持つ。なんてことのない毎日や時間がリズムを帯びて動き出していくような曲、サウンドは、洗練されているがとてもフレンドリーだ。そんなところがリスナーを増やしている理由だろう。 音楽活動をはじめて1年足らずでSNSを通じて曲が拡散されて2021年にはメジャーデビューという、現代らしいスピード感やある種の器用さで人気アーティストとなったimaseだが、実際の彼はどんな人なのか。クールで飄々とした佇まいのイメージ、そのままなのか。それはライブを観るとよくわかる。キャッチーでフレンドリーな曲、いつの間にかクセになるその曲同様に、imase自身もまた柔らかなユーモアがあってキャッチーな人だ。 MCでは、今ハマっているというドラマ『プリズン・ブレイク』の話をしたり、そのドラマ内の人物のモノマネをしたり、かと思えば長くライブやツアーを共にしてきて打ち解けたメンバー(いずれも百戦錬磨のミュージシャンだ)に話を振り時にむちゃ振りをし、また観客を盛り上げ、と場を回していく。それが頑張っている感じじゃなく、さりげなく“弟感”もあって朗らかなムードが漂っている。この感じが、曲にも生きているところがあるんだろうなと思う。