厚さ30センチ必要なのにたった3センチ…現場所長はさじ投げた『空洞だらけのトンネル』不良発覚も隠ぺいし改ざん 調査報告書から見えたトンネル工事の『ずさん』な実態
調査報告書では『コンプライアンス意識の低さが根本的原因』
調査報告書では、今回の施工不良の原因について有識者らは「トンネル施工に関する基礎的知識の欠如に加え、コンプライアンス意識の低さが、深刻な施工不良を発生させた根本的な原因」「社会や公益に対する技術者としての責任を認識していないことも、施工不良の発生原因」などと言及しました。 また、施工不良に気づいた担当者もいたということですが。「所長の判断は絶対」「所長を超えて内部通報はできない」と考え、所長の決定に従わざるを得ない環境だったということです。今回の調査報告書の公表を受けて、浅川組は「真摯に受け止めています」とのみ言及しました。
県の担当職員は初の監督業務…周りの職員フォローせず
途中段階で確認をしていれば未然に防げたかもしれない今回の施工不良、調査報告書で、県側の組織体制の不備についても言及が及びました。県の担当職員は今回のトンネル工事が初めての監督業務だったということです。本来、経験豊富な職員によるフォローが必要な状況でしたが、十分な体制がとられていなかったということです。工事途中での『段階確認』も136回中6回しかできておらず、「検査の際に施工業者からの連絡があるのが基本だが、その連絡がなかった。連絡が少ないことに組織として認識ができていなかった」ということです。 今回の施工不良は施工業者側のずさんな実態が引き起こしたことは言うまでもありませんが、和歌山県は再発防止策として、工事の途中段階で県の監督員が確認する「段階確認」が確実に行われるよう、全工事の着手前に施工業者との打ち合わせで記録し、双方で申し合わせをしたうえで、上司に決裁をするような組織体制を強化していくとしています。
完成したのに工事は全面やり直し…開通は本来の予定時期の2年後に
今回調査報告書を作成した有識者らは、厚さ不足などに加え、鋼材が本来の設置位置からずれていることなどから、コンクリートを全てはがし、工事を全面的にやり直す必要があると判断しました。施工した浅川組などは、去年12月からコンクリートをはがす工事をはじめ、ほぼ撤去が完了したということです。今後、改めて工事を進めていきますが、完了は来年12月の見込みで、本来の開通時期から約2年遅れになるということです。
浅川組施工の他のトンネル工事に関しても調査
県によりますと、施工を担当した浅川組は和歌山県内で2005年~2019年にかけて11のトンネル工事に単独もしくはJVの形で関わっていたということです。県では問題発覚後に各トンネルの工事報告書などを確認し、書面上は問題がないことを確認したということですが、今後は現地で詳細に検査を行うなどして、全トンネルについて施工不良がなかったかを全面的に調査を行う方針だということです。 南海トラフ地震など災害時に住民らの避難路としても活用され予定だった今回のトンネル。地元住民にとっても1日も早い開通が地元住民によっても望まれます。