古橋亨梧はなぜ1年ぶりに代表に招集されたのか? 森保監督の言葉にあったヒント【前園真聖コラム】
森保監督が語っていた古橋招集の効果「さらにチーム力も上がります」
これまでに元日本代表の前園真聖氏は、FW古橋亨梧(セルティック)が日本代表にしばらく招集されていない理由を推測していた。この11月シリーズに、森保一監督は1年ぶりに古橋をメンバーに加えた。なぜ、森保監督は再び古橋を日本代表に呼んだのか。前園氏に考えられる条件と、そして監督に対する提言を聞いた。(取材・構成=森雅史) 【写真】「美人すぎん?」「誰?」 日本代表FWの隣に“美女”と話題の1枚 ◇ ◇ ◇ 森保監督は古橋亨梧(セルティック)を2023年11月以来、久々に招集しました。代表としてプレーしたのは2023年10月が最後ですから、1年以上のブランクがあったのですが、それでも招集しました。森保監督は会見で「行ける限りスタッフはセルティックの試合も現地で見て、そして試合映像を通して確認をしてきている」と明かし、負傷した上田綺世(フェイエノールト)の代わりではなく「今回選ぶべき選手」だったと語っています。 また、招集の狙いとして「彼個人の良さを生かすという部分でも、チームとしてもいろんな攻撃のバリエーション、選択肢を持って戦えるようになると、さらにチーム力も上がります」とも話していました。 僕はこの連載の中で古橋が代表に来たときに「古橋が得意とする裏への抜け出しと味方のパスが合わない」と分析していました。実際、彼がこれまで代表で挙げたゴールでパスからゴールを決めたのは、浅野拓磨(マジョルカ)からの縦パスに俊足を飛ばして抜け出したゴールと、相馬勇紀(町田)のクロスに合わせた2点だけで、あとはこぼれ球に勘良く詰めた得点です。 森保監督は最近の古橋に関して「セルティックでは中盤の起点となって、前線の起点となってもう一回ゴールに侵入していく、ゴール前に侵入していくことがさらに求められているプレーをしているということも確認できています」とコメントし、古橋のプレーの幅が広がったと捉えているようでした。ただ、今も古橋の最大の特長は、スピードを生かした背後への飛び出しということは変わっていません。所属チームも変わっていないので役割も大きく変わったという事ではないでしょう。 それなのに、なぜ森保監督は古橋を招集したのでしょうか。そのヒントが、森保監督の代表発表会見のコメントの中にあったと思います。 「本当に彼の良さを出そうと思えば、我々が押し込んで試合をしなければ。守備にもタスクを負ってもらわないといけないので、そこから攻撃に出ていくという部分になると、良さは出ないと思います。より押し込んだプレーで、ディフェンスラインぎりぎりのところで駆け引きをしてもらえるような展開に持っていかなければいけない」 つまり日本が押し込まれる展開では古橋の良さは出せない、ということで招集外だったのでしょう。ですが、日本は2022年カタールW杯後、自分たちでボールを保持して主導権を握る戦いを目指して活動しています。そして、その成果が出ているので、この状況なら古橋を呼んでプレーさせることが可能だと思ったのではないでしょうか。 ただ、僕は森保監督にそれでも考慮してほしい部分があります。それは、これまでの日本代表では古橋とタイミングを合わせてパスを供給する選手が少なかったということです。ですから今回は古橋をチームメイトの旗手怜央(セルティック/スコットランド)と一緒に投入してみるのはどうでしょうか。そのことで、これまで古橋と接点が少なく、プレーを理解できていないほかの選手たちの理解が深まるはずです。そして、古橋が生きるようになれば、日本の得点力はもっと上がるに違いありません。 [プロフィール] 前園真聖(まえぞの・まさきよ)/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。
前園真聖 / Maezono Masakiyo