吉本、爆笑問題、ビートたけしの血が流れている!? 22歳の放送作家が作った本屋「古本興業」に行ってみた!
■小説すら読めなくなった人に、1行で、どこから読んでもいいような本を ――本はどういうものが好きなんですか? 若林 中2の頃にすごく読んでたのは、太宰治とか、坂口安吾とか、無頼派と呼ばれる人たちですね。これはお笑いにも通じるんですけど、恥ずかしい部分をさらけ出して笑いや感動を生むっていうところにすごく惹かれるんです。自分が引きこもってたこととか、「自分なんてダメだ」って思ってたことも、笑いとか文学に変換できるんやって。 『堕落論』なんてもう完全に、もっと人間は落ちるとこまで落ちるべきだっていう、人間のダメな部分を肯定してくれる作品じゃないですか。ああいうのを読むと、どんなに負い目を感じていても「君はそのままでいいよ」って言ってくれるような気分になるんです。 ――歌人の枡野浩一さんの仕事場兼フリースペースである、ここ枡野書店にお店を間借りすることになった経緯は? 若林 本屋を始めたくていくつか物件を探してて、その中で最初に有力だったのが京都の銭湯の2階だったんです。最近の昭和レトロブームとかもあって、古本屋と銭湯って通ずるものがあると思ったし、古書店のちょっと臭くておじさん店主がにらみつけてくるような雰囲気とかも僕は好きなんですけど、苦手な方もいますよね。銭湯の上ならそういうところも払拭できるんじゃないかなと思って。でもそこでの話は流れてしまったんですね。そんな時に枡野さんがXで、「枡野書店を辞めようと思っているけど誰か継いでくれる方いませんか」ってつぶやかれていて、家からも近いし一度連絡してみようと思ったんです。それで一度ご飯に行ったら、「1回来てみる?」って言われて、その日のうちに「じゃあここでやってみるか」みたいな流れになって。枡野さんは「明日からでもいいよ」って言ってくださったんです(笑)。 でも枡野書店を間借りするからには、きちんと準備をして開店まで盛り上げないといけないと思って、銭湯をロールモデルにしようとしていた名残で開店日を「よい風呂の日」(4月26日)に設定して、開店準備の模様をSNSやYouTubeで毎日発信するようにしました。 その時点でもう風呂は関係なくなっちゃってるんですけど、それもあって枡野書店での営業時間以外で、銭湯を回って店先で本を売るっていう活動を今でも続けています。 ――古本興業の品揃えはどういうコンセプトですか? 若林 枡野書店を間借りしているからには、まず詩歌の本を揃えたいと思っていて。僕が19歳の時、お笑いでつらいことがあった時に小説すらも読めなくなってしまって、そういう時は詩集や歌集にものすごく救われたんです。その中には枡野さんの短歌もありました。 「やめようと誓った行きとやめるのをやめようかなと思った帰り」(初出『ますの。』実業之日本社刊)っていう短歌が特に印象に残っていて。ああいう、1行で、どこから読んでもいいような本をたくさん揃えたいと思っています。 他には、こんな名前の店だからこそ芸人さんの本のコーナーがあったり、中央線の駅がテーマの本を駅順に並べてたり、喫茶店の本を並べたり。サブカルっぽい本はサブっていうくらいだから端に置いたり、僕が暗いときに読んでた本はうつむきがちな人に気付いてもらえるように下の方の棚に置いてたりします。